*初恋*

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 気に入らないキス イジワルで10のお題
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「二次創作」
短編

secret note

 
 気に入らないキス イジワルで10のお題

琴子なら…やっててもおかしくないよなぁって。







「secret note」





「うへ…えへへへへ~~…」

 思わず笑いが零れる…という感じなんだろう。
 よくわからないが、傍から見ていて気持ち悪い。
 お茶を入れたから呼んでこいと言われて来たものの、こんな気持ちの悪い同居人を見なくてはならないくらいなら来なければよかった、とも思う。
 下から呼んだって良かったんだ。
 俺もたいがい、お人よしだよな。

「おい、寝る前にお茶飲まないかって。お袋が」

 濡れた髪を拭いたスポーツタオルを肩からさげ、俺はニタニタ笑う琴子に声をかけた。
 途端に、びくっと体を強張らせている。
 …面白れぇ。
 これ、からかえってことだよな?

「いいいい、いり、入江くんっ!?」
「そーだよ。入江くんだよ。お前、さっきから何やってんの?」

 お袋の趣味全開の、装飾過剰な部屋にずかずかと入り込む。ここが女の部屋であるという意識は俺にはない。
 琴子は俺が近づくと、慌てて広げていたノートを閉じた。
 確かにそれで中身は見えなくなったけど、代わりに、表紙デカデカと書かれたタイトルが目に飛び込んでくる。

『入江くんとの妄想デート☆』

 ……あほか、コイツ。痛々しいにも程があるだろ。
 カラフルな文字に過剰なデコレーションが、このノートにかける琴子の夢中っぷりを物語っている。
 思わず半眼で見下ろすと、琴子は真っ赤になっていた。
 ったく、そんな赤くなるくらいなら、こんなもん最初からやんなきゃいいだろーに。
 対して興味はなかったけど、琴子の反応が面白くて、俺は琴子の手からノートを抜き取った。

「あ、や、やだ!」

 琴子が慌てて立ち上がった。
 俺の方が、琴子より頭2つ分はでかい。俺が腕を伸ばしてしまえば、その手先にあるノートに琴子が届くはずがない。
 だというのに、琴子は俺に縋りつくように必死に腕を伸ばしていた。

「返して返して!」
「俺との妄想デートなんだろ?俺が見たっていーじゃん」
「だ、ダメ!」

 琴子が、俺の胸元でぴょんぴょん跳ねている。
 俺と同じく風呂上りの琴子が動く度に、こいつの頭からシャンプーの匂いがした。俺と同じものを使っているはずなのに、なんでか少し違うような…。
 加えて、必死な琴子は、左手を俺の肩において右手を必死に伸ばしていて、そのせいで、琴子が無防備な格好でいることに否が応でも気づかされた。
 こいつ、俺のこと好きだって言う割に、俺が男だってこと忘れてんじゃねぇか?
 長袖のシャツにハーフパンツという井出達の琴子の胸元を見下ろして、俺はそんなことを思った。
 まあ、俺に抱きついてる分には……俺が変な気を起こすはずもないから安全か。
 俺はそう結論付け、琴子からすると遥か頭上に掲げたノートを開いた。
 
「入江くんはあたしに自分のマフラーを渡してくれて、お前が風邪ひくのは耐えられないと…」
「きゃあああ!!!」
「なんだよ、お前の妄想なんだろ?」
「い、入江くんに読んでほしいなんて思ってないもん!!」

 ついに我慢がならなくなったのか、琴子がえいっとジャンプしてきた。
 思わず琴子を受け止めようと腕を下げた隙に、ノートを奪い取られる。
 琴子は真っ赤な顔で俺を睨むと

「おばさんに、すぐ行きますって言っといて!」

 と叫んで俺を部屋から追い出した。





     **********




 
「入江くん?どうしたの?」
 
 琴子が見たがっていた映画につきあった帰り、家まで歩きながらぼんやりしていた俺を、琴子が不思議そうに見上げている。
 小さな唇から白い息が零れる。
 それは今の季節が冬ということで――あの悪夢のような夏を超えて、俺達が結婚したということを実感させた。
 そんなに昔のことじゃないはずなのに、酷く昔のことのような気がする。
 それくらいあの夏の日々は、俺にとって記憶に残したくないことなんだ。
 琴子の目に俺以外が映るなんて、ほんと、冗談にもなりゃしない。
 今だって琴子の目には俺だけが映っていて。それで、俺は安心して。
 
「なんでもない」
「ええ?教えてくれないのー?」

 そんな風に他愛ないことを話ながら、俺達は連れ立って歩いていた。
 タクシーを拾ってもよかったけど、こうして2人で歩くのもたまには悪くない、なんて思ったから。
 坂を上ると、家まではあと少しだ。その途中にある公園まで来たとき、俺はふいに、あのことを思い出した。
 確か、俺はマフラーをこいつにやって、それから…?
 
「入江くん?」

 突然立ち止まったかと思うと、自分を引き摺るようにして公園に入る俺を琴子が見つめている。
 視線だけで考えてることがこれだけわかるって、ある意味すごいよな…いや、俺がじゃなくて、こいつが。
 大きな目が

 どうしたの、入江くん。
 ここに用があるの?
 あたし、一緒にいていいの?

 そう言っているのが……可愛くて。
 俺は噴水の前まで琴子を連れてくると、なすがままの琴子を抱きしめた。

「え、え!?」

 腕の中で、素っ頓狂な声が上がる。
 ったく、ムードもへったくれもないヤツだな。
 俺は滑らかな琴子の髪にキスを落とすと、巻いていたマフラーを琴子の首にかけてやった。
 何だろうな。今日はそうしてやってもいい気分だったんだ。
 ここのところずっと忙しくて、琴子に触れてなかったっていうのが大きいかもしれない。

「お前が風邪ひくのは耐えられないからな」
「え゛…」

 ぴし!!…という音でも聞こえそうな感じで、琴子が固まる。
 そりゃそーだよな。自分で書いてた物なんだから、どんなバカでも記憶に残ってるだろ。
 
「お前の手は、俺のここだろ?」
「い、入江くん…まさかとは思うけど、それって…」
「んで?それから俺はお前にキスすんだっけ?」

 少しからかってやって、それで、軽くキスして帰ろうと思ってたんだ。そのときまでは。
 だけど。

「……っ!!!!!」

 一気に耳まで赤く染めて、恥ずかしそうに俯く琴子は本当に……可愛くて。すげー可愛くて。
 俺のマフラーに顔を埋めて、俺の胸に手を当ててそうしてる姿は、思いがけない破壊力だった。
 思わず琴子の顔を両手で包み、少しでも近くで見ようとしてしまう。
 夕日を受けているだけでなく、ほんのりと赤く色づいた琴子の唇が震えていた。

「お前、さ」

 琴子の目が潤んでる。そんな目で見るな――この場で抱きたくなるだろーが。

「まだあのノート持ってんの?」

 こくり、と琴子が頷いた。

「でも、もう書いてないよ!」
「ふーん?」
「ホントよ。だってね、ダメなの…入江くんと結婚してからは、ああいうの、考えるとね…思い出しちゃって」

 その割には、琴子の妄想癖は治っていないような気もするが、琴子が言った言葉の意味を反芻して、俺ははなるほどと納得した。
 ざっと読んだだけでも、あのノートには俺と琴子のキスシーンが多かったからな。
 でも今はあんな風に妄想しなくても、俺は琴子にキスをする。当然、そこから先も進む。
 あの頃のように妄想しようとしたら全部思い出すから、未だに初心な琴子にはとんでもなく恥ずかしいことなんだろう。
 俺は相変わらず真っ赤になっている琴子の目に、そっとキスをした。
 
「ちょ、入江くん…っ」

 そのまま、琴子の鼻、頬、額とキスを落としていく。
 でも、唇は放置。何度もそれを繰り返していたら、琴子がふにゃりと眉を下げて俺を呼んだ。

「ヤダ…ちゃんとキスして…」
「ちゃんとって?」

 琴子が言葉に詰まる。わかってて言ってる俺もいい趣味してると思うけど、琴子が悪い。
 俺を煽るから。
 琴子は俺の胸に置いたままだった手を滑らせて、俺の背中をぎゅっと抱きしめた。
 さっきよりも体が密着して、琴子の熱が俺に伝わる。
 ここが公園だっていうのに、マジでやばくなってきたかもしれない。けしかけたのは俺なんだけど。

「ここ…」

 ん、と目を閉じて、琴子が唇を差し出す。
 くそっ……俺はこれに弱いんだ。
 引き寄せられるままに琴子の唇を吸って、俺は華奢な体をきつく抱く。
 
 
 今すぐ帰って、琴子を啼かせたい衝動を抑えるのが大変だった。





 END
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拍手お返事 

>さくら様

やはりドがつくSであってこそ、入江直樹!と思ってます(笑)
本人はMにされたみたいなこと言ってましたけど…どう考えても、Mは琴子ですよねぇ。

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