*初恋*

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「二次創作」
短編

イリちゃんパパのとある一日part2

 
 あゝ、勘違い。 ご、ごめんなさい!
なんだか何気にご好評いただけたようで…イリちゃんパパ、またも登場です(^m^)
そして、2つ目の更新です。1つ目をまだご覧になっていらっしゃらない方は、お時間がありましたら、是非1つ目も見てやってくださいませ。





「社長、奥様からお電話です」

 そう秘書が取り次いでかかってきたのは、愛しの奥様からのお電話だった。
 最近――そう、直樹が見合いを蹴って琴子を選んだ日から、最近妙に多いなぁ、というものである。
 重樹は呑気に「紀ちゃん、わしの声を聞きたいのかもしれないな」などと思いながら、社長室の電話を取った。
 
「もしもし、紀ちゃん?うん、そう、わし……え?そうなのかい?」

 重樹が些か慌てた様子を見せる。
 続きとなっている秘書室から、数人の秘書が怪訝そうに顔を見合わせた。
 なんせ、倒産の危機を免れたばかり。あの頃の不穏な空気や不安はまだ遠い過去のものではなく、秘書たちはマイナスな空気に敏感だ。
 それには気づかず、重樹は額に汗を浮かべて、でも、けどね、と何やら必死に言い募っている。
 相手が社長夫人ならば、個人的なことだろうか。いや、そうでなくては困るのだが――誰もがそう思って見守っていると、重樹ははあ~~~、と盛大なため息をついて受話器を置いた。
 そして、秘書たちの視線に気づくと、汗を拭き拭き微笑む。

「すまないが、今から妻が来るんだ。直樹にそう伝えてもらえるかい?」
「社長代理に…ですか?ですが、社長代理は今、大事な会議中で」

 重樹の第一秘書が眉を顰めた。
 本当に大事なものだから、滅多なことでは邪魔できないとわかっているのだ。
 そして、そのことこそ、先ほど重樹が電話口で汗を掻きながら紀子に説明したことなのだが……聞き入れられていたのなら、重樹の汗はとっくに引いていただろう。
 重樹は再び汗を噴き出させると、ともかく頼んだよ、とそそくさと社長室に引っ込んだ。
 パンダイ社長、入江重樹。
 ……妻のお願いには弱いのである。




                    ***********




「ばぁ!」

 ひょこっと顔を出した恋人に、重要な会議中にも関わらず引っ張り出された直樹は盛大に顔を顰めた。
 直樹の後ろでは、興味津々の社員たちと、強引に開けられて壊れたドアがあるが、顔を顰めたのはそのことでもなければ、琴子にでもない。
 その背後にいる、目を三日月型にした自身の母親の姿を認めたからだ。
 琴子がここにいるのも、会議中に引っ張り出されたのも、全ては紀子が仕組んだこととすぐに理解したのだった。

「今日ね、おばさんと一緒に引き出物見てきたの。たくさんあって迷っちゃって、出来たら入江くんにも見てもらえたらなぁって思って」
「……任せるから、帰ってくれ」

 正直、引き出物などどうでもよかった。
 その気持ちがあまりにも正直に態度に出てしまっていたのか、琴子の顔が曇る。
 元々、結婚は大学を卒業してから、と言っていた直樹が、紀子の策略で強引に結婚することになったと思っているのだ。
 それも全て、あまりに突然通じ合った気持ちに、琴子の心がついていかないことによる不安が根っこにあるのだが。
 そこに持ってきて直樹のこの態度では、入江くんはあたしと結婚なんてしたくないんだ、と琴子が思ってしまうのも無理はない。
 
「そ、そうだよね……えへへ、ごめんね。忙しいのに」

 琴子がささっと前髪を抑え、俯いた。
 きっと、その下の顔は悲しげに歪んでいるのだろう。
 それに気づき、直樹はムッとした。琴子にこんな顔をさせたいわけではないというのに、紀子が連れて来たりするから、誤解させるはめになるのだ、と。
 見れば、柱の陰で紀子が目を吊り上げ、キーキーと何か言っている。
 直樹はそれを一瞥し、琴子の手を引いて歩き出した。

「10分休憩だ。中にもそう言っておいて」

 直樹と共に会議室を出てきて、さてどうするのか、と様子を見守っていた自身の秘書に振り返り様、そう告げる。
 秘書は丁寧に頭を下げ、かしこまりました、と言って壊れたドアを跨いで会議室へと戻って行った。





 社長代理の執務室に戻ってきた直樹は、デスクに浅く腰掛けると、琴子の腰を抱き寄せた。
 恐らくブライダルエステにも行ってきたのだろう。
 近づくとふわりと薔薇の匂いがした。

「入江くん……良かったの?」
「大分煮詰まってたしな。まあ、一度空気を入れ替えるのもいいから」

 それが事実かは琴子にはわからない。わかるのは、直樹が気を遣ってくれたことである。
 琴子は嬉しそうに破顔した。

「たくさんの人が集まって、いっぱいいっぱい考えてもなかなかうまくいかないんだね」
「まぁな」
「なんだっけ、ほら、あれよ。三人よれば文句が出るだっけ。たくさんいると難しいのよね」

 …まあ、確かにそういうこともあるかもしれないが、違う。
 直樹は自信たっぷりに口を尖らせる琴子を見て、ぷっと吹き出した。

「それを言うなら、三人寄れば文殊の知恵だろ。それも、特別頭の良い者じゃなくても、三人集まって相談すれば何か良い知恵が浮かぶものだっていう」
「そ、そうだっけ……??」
「ま、お前ら三バカトリオじゃ文句しか出ねーだろうけど」

 琴子、じん子、理美と言った顔を思い浮かべ、直樹がにやりと笑う。
 琴子はむうっと頬を膨らませた。
 確かに三人揃って難しいことを考えるのは苦手だから、言い返せないのが悔しいのだ。
 直樹はそんな琴子をより近くに抱き寄せると、それで?と顔を覗きこんだ。

「引き出物がなんだって?」
「ああ、うん。あのね、どれがいいか決められなくて」

 琴子はそう言いながら、バッグからカタログを出して広げた。
 いくつかのページに付箋が貼ってあり、どうやらそこが気になる商品の出ているページらしい。
 パラパラとそれらを見た直樹は、ひくっと頬を引き攣らせた。

「な、なんだこれは……」
「名入れサービスだって」

 ワイン、日本酒、ワイングラス、リンゴ、お米。
 そのどれかに「直樹&琴子」という刻印を刻む予定だという。
 贈る本人たちはそれでいいかもしれないが――直樹に限って言えば、贈る側としてもお断わりだが――もらった方とて、これは困るんじゃなかろうか。
 せめて消え物ならいいが……例えば、金之助が「直樹&琴子」と刻まれたグラスで日本酒を飲むとしたら、それはもう、何とも言えない自虐行為である。
 
「どれも素敵よね!でも素敵すぎて、おばさんと二人じゃ決められないの。おばさんはね、もし決められないならこっちはどう?って言うんだけど……」

 琴子が次に示したのは、フォトフレームだった。
 左に写真が入り、右に新郎新婦からのメッセージが刻まれるものだ。カタログには「ご両親への贈り物に」とある。恐らく本来は、両親への感謝のメッセージを刻み、プレゼントするのだろう。
 だが、紀子はそれを一般の招待客に贈ってもいいと言っているという。

「“最愛の妻を大事に。最愛の夫を大事に。わたし達、幸せになります。直樹&琴子”そう刻むのはどうかって」
「やめろ」
「へ?」
「名入れはやめろって言ってんだよ!」

 考えるだけで頭痛がする。
 直樹はとにかく別のものにするように琴子に言いつけた。

(10分しかないのに、こんな話で終わるのか!?)

 リフレッシュしたくて時間を取ったのに、これでは単に疲れただけではないか。
 そんなのは嫌だ。
 直樹は琴子の顔を強引に自分に向けると、いささか乱暴に唇を奪った。

「なに、え……んっ」

 恋人のキスは、まだ数えるほどしかしていない。
 それでも甘く求められることは嬉しいようで、琴子はとろん…と全身を甘く蕩けさせ、直樹の腕にその身を預けたのだった。





                   **********





 一方。
 
「社長……会議室のドアが壊れました」

 強引に会議を中断させられた直樹が、力任せにドアノブを握り、ロックされていたにも関わらず強引に開けようとした為、ドアが壊れてしまったのだ。
 もがれたドアノブと、ぽっかり穴の開いたドアを見つめ、重樹がため息を吐く。

「仕方ないな、業者を呼んで修理を頼もうか」
「その手配は済んでおります。ですが……」
 
 第一秘書が、言いにくそうに言葉を濁す。
 修理の手配も済んでいるのに、何が気になるのだろう。重樹は怪訝に思いながら第一秘書の顔を見た。
 ややあって、第一秘書は意を決したように口を開いた。

「社長代理に修理代を請求しようと思いましたら、その……社長夫人を止められなかった社長に請求してくれ、と言われまして」
「何!?」
「よろしくお願いします」

 見積書、と書かれた薄い紙を強引に渡され、重樹は渋々それを見た。
 そして、七福神のように穏やかな彼の顔に驚愕が浮かぶ。

「よ、四十八万円!!??」
「あのドアは古いものでしたので、全く同じものはないそうで」
「そんな……」
「経費では落ちませんので、社長のポケットマネーでお願い致します」
「わし……来月のお小遣いが貯まったらゴルフクラブを新調しようと思って……」

 お小遣い制だったのか、入江重樹。
 社長と言えども世知辛い世の中だぜ、と第一秘書が思ったかどうかはわからないが、彼は眼鏡の端をくいっと持ち上げ、仰々しく頭を下げた。

「まことに残念でございました」

 チーン、という音がどこからともなく聞こえた気がする、入江重樹の11月であった…。



END



地味~に痛い目に遭うイリちゃんなのでした(^^;
短い恋人期間の二週間は、甘酸っぱい妄想が広がります。このお話は甘酸っぱくは……ないか(笑)。


 
 
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~ Comment ~

NoTitle 

ぱ、パパ~!!(笑)

紀子ママは今回もやらかしてくれましたね!!
私てっきり会議室のドアはママが壊したのかと思っていました~(笑)
「んもう!こんなに可愛い婚約者がわざわざ来たっていうのに会議ですって?婚約者に会う以上に大事な会議がありますか!ちょっとお兄ちゃん!?でてらっしゃい!!お兄ちゃん!!(ガチャガチャバキッ、ミシミシ、ドッターン)」
なんて…(笑)
実際は入江くんで、ほっとしました(いや、安心すること?)

パパってば社長なのに、お小遣い制なんですね…それもまた似合ってます☆( ̄▽ ̄)b

ああ…パパが可愛くてしょうがありません(笑)

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NoTitle 

お元気でお過ごしですか?そろそろ、バカップルに対する欲求不満になりそうです!お時間のある時にでもお願いします!

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>玉子様 

>玉子様

あはは!それもありそうですね!
笑顔で壊す紀子ママとか、簡単に想像することができます(笑)。

バブルな時期を経験しているパパですが、残念ながら昨今の不況の波を受け、社長だけどお小遣い制になっております(うちでは)。ふふふ……ゴルフクラブ貯金ですよ、ええ。ブタさん貯金箱か、500円玉を貯めると10万円とかになる缶の貯金箱を愛用していると思われます。(酷)

私も最近、あのパパが可愛くてなりません(笑)。
いい出汁……じゃない、味出てますよね♪

>YKママ様 

>YKママ様

お返事遅くなりました~!!ごごご、ごめんなさい!!
私はどうも、天才である入江くんが琴子ちゃんに関することでだけ、そこら辺の男子みたいになってしまう瞬間というのが好きなようで、そういうシーンを妄想してはうへへへと(←気色悪い)と笑っております(笑)。

イリちゃんパパの背中も、想像しちゃいました!きっと欲しいゴルフクラブがあったんですよ。でも高かったんですよ(社長感覚でも)。それにようやく手が届きそうだったのに、野獣な息子の怒りに触れたために……ぷぷぷ(酷)。
裕樹くんは、非捕獲者の仮面をかぶった捕獲者、というのも美味しいかと思います。2強(この言い方、好きです♪)が本当に別格すぎるので、彼は普通に見えてしまうと思いますが。…。
春に向けてゆっくりエンジンかけてくので、またよろしくお願いいたします!

>annna様 

>annna様

遅くなってごめんなさい!
お祝いのメッセージ、ありがとうございました~!!
素敵な原作でたくさん妄想させてもらって、またそれを皆様と楽しむことができて、私の方こそ感謝でいっぱいです♪

高いゴルフクラブは本当に高いらしいので、イリちゃんパパのお小遣いなんてあっという間に吹っ飛んでしまったんだと思います(笑)。容赦なし、第一秘書!後からそっと領収書を差し出す彼がいたことでしょう。
名入りの引き出物……個人的にはグラスなんですが、どうでしょうね。
金ちゃんに「くぅ~~…琴子おお~~~!!」と言いながら使って欲しいのですが…(笑)。

>みゆっち様 

>みゆっち様

脇フェチ、わかります!!
メインもいいけれど、その脇にだって美味しいキャラはわんさかいるんですよね♪
特にイタキスは脇でも真の悪人は出てこないので、余計に愛が湧いてくる気がします。

…の割りに、一生懸命イリちゃんが貯めたお小遣いをドアの修理費にしてしまったりと、酷い気がしなくもないですが(笑)。
これも愛情の一種、とイリちゃんに許してもらいたいなぁ、なんて。

>たんたんはは様 

>たんたんはは様

初めまして!初コメありがとうございました!
折角の初コメでしたのに、お返事が遅くなり申し訳ありません!
そして、そして!なんてありがたいお言葉を……原作の素晴らしさあってこそとはいえ、そう言っていただけると嬉しいです。妄想した甲斐があった!みたいな(笑)。妄想甲斐ってのも変な話ですが。

先日メールをしておりますので、このリコメも変な感じではありますが……これからもよろしくお願いいたします!

>たんたんはは様 

>たんたんはは様

いえいえ!お気になさらず!!
自分でも時々打ち間違えますから(笑)←ダメじゃん!

>kazigon様 

>kazigon様

御陰様で元気です♪気にかけてくださってありがとうございます!
バカップルですね、承知いたしました!
入江くん、琴子ちゃん可愛がっていいって~!!(ニヤリ)

>たんたんはは様 

>たんたんはは様

ご丁寧にありがとうございます!
その場その場の雰囲気もあると思うので、たんたんはは様の使いやすいところを使ってくださいませ(^^)。

色々「早くしなきゃ~!」と思いながらも、なかなか更新できずにおりますが、書いてますので(笑)!
もちっと待ってやってください(汗)。
入江くん、ツンツンしてますけどね……ふふふ。

リコメはいいということでしたが、折角お時間を割いてくださったのにそんなことできない、と思い、短いですがお返事させていただきました。
私が勝手にしてることなので、たんたんはは様の負担には思わないでくださいませ♪
これからもよろしくお願いいたします!
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