*初恋*

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 イリちゃんパパのとある一日 えっちゃんのまほうのて
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「二次創作」
短編

ドキドキおじさん

 
 イリちゃんパパのとある一日 えっちゃんのまほうのて
ドキドキおじさん






「ただいまぁ」

 少々間延びした帰宅を知らせる声がして、リビングで琴美のおむつを替えていた琴子は「おかえり~」と声を上げた。
 この声は直樹ではない。
 似ているけれど、ちょっと違う。

「お、琴美起きてるじゃん」
「さっき起きたんだよ」

 帰宅したのは裕樹だった。
 休日の今日、彼は好美とデートだったらしい。それでも深夜まで歩き回らず、好美の両親が安心できる時間に帰宅してくる辺り、裕樹の好美への配慮が感じられた。
 そして、それは恐らく紀子の安心にも繋がっているだろう。
 口では嗾けるようなことを言う紀子も、実際は二人を取り巻く環境にあれこれ配慮し、ベストな状態が続く様にと願っている。
 琴子もそれは同じで、二人が今日も仲良く一日を過ごし、問題なく帰宅したことに安堵していた。キッチンから声だけで「おかえり」と言った紀子の声から、そんな気持ちをくみ取ってしまうのは琴子も母親になったからだろうか?
 まさかそんな風に心配されているとは思っていないだろう裕樹は、起きて授乳も済み、お尻もサッパリしてご機嫌な琴美を覗きこんで目尻を下げている。
 姪っ子が可愛くて仕方ないらしい。
 直樹よりも感情表現がわかりやすいので、琴子にもそれはすぐわかった。

「みーちゃん、裕樹おじちゃんだよ~」
「おい、おじちゃんはやめろよ。お兄さんだろ」
「えぇ?図々しい……」
「それはお前だろ!!」

 赤ちゃん繋がりで知り合ったママに、琴子が「琴子お姉ちゃんですよ」と自己紹介しているのを、裕樹はたまたま聞いたことがあった。
 自分よりも9つも年上の琴子が「おばさん」という言葉を敬遠し「お姉ちゃん」と言い張っているのに、何故自分が図々しいと言われねばならないのか。
 噛みつく裕樹に、琴子はけらけら笑った。
 そのうち「琴子」なんて名前は消えて「琴美ちゃんのママ」とか「みーちゃんママ」と呼ばれるようになるのだ、と。
 すでにその兆候はあるのだ。ほどなく、誰からもそう呼ばれるようになるだろう。
 そんな話をしていた時だった。

「ま、ぁま。まぁま」

 たどたどしく琴美が声を上げる。
 琴子と裕樹は顔を見合わせ、次の瞬間、ベビーベッドにかじりついた。

「み、みみみ、みーちゃん!もう一回、もう一回言って!」
「まぁま?」

 まぁま―――ママ。
 ママ!!

「っき、きゃぁああああ!!!」

 琴子が悲鳴を上げて身悶えた。
 琴美が驚いたように目を瞬かせ、裕樹がうるさそうに両耳を手で塞いだ。

「き、聞いた!?裕樹くん、ママだって!みーちゃんがママって!お、お義母さん~!!」

 琴子がバタバタとキッチンに走る。ほどなくしてハンディカム片手に紀子と戻ってきて、二人は馬鹿の一つ覚えのように琴美に「まぁま」と言わせた。

「入江くんに自慢しなきゃ!」
「お兄ちゃん喜ぶだろうな」

 琴美には臆面もなく優しい顔を見せる直樹を思い浮かべ、裕樹も嬉しそうだ。
 ママと言うのが先か、パパと言うのが先か?なんて競争をしていたわけではないので、純粋に琴美の成長を喜ぶだろう。
 そんな風な想像をするくらいだから、だから、誰にも予想できなかった。
 この数ヶ月後、入江家に襲い掛かる衝撃を―――。




                     *********




 琴美が「ママ」と言えるようになった数か月後。
 その日は、珍しく週末に家族が揃っていた。相変わらず勤務医の直樹は忙しい身の上ではあるのだが、家庭持ち、子持ちになると多少は配慮してもらえるらしい。
 夕食後、リビングの柔らかな絨毯の上にプレイマットを敷き、その上に座った琴美を直樹を含めた家族で囲むという、何とも温かい時間を過ごしているとき、その不幸は起こった。

「まま、まま」
「なぁに~?みーちゃん」

 ママ、と自分だけ呼んでもらえる琴子は、どこか得意気だ。
 そして次に琴美が呼んだのは…。

「ぱぁぱ、ぱ、っぱ」

 紅葉のような小さな手が伸ばされる―――裕樹に。

「!!!!」
 
 ぴし!!と裕樹が固まった。
 何かの間違いではないかと思うが、琴美は迷いなく裕樹に手を差し出している。
 確かに裕樹の方が自由になる時間も多く、琴美と接する時間は長いかもしれない。琴子や紀子が忙しそうにしていたら、お風呂に入れてやったりおむつを替えてやることだってある。
 だが、しかし―――忙しい仕事の合間を縫い、可愛い可愛いと一番目をかけ、愛情を注いでいるのは父親である直樹のはずで。
 裕樹はギギギ…と、油のきれたロボットのようなぎこちない動きで、横に座る兄を見た。
 そこに、駄目押しのように琴美が「ぱぱ」と言って、裕樹の服を引っ張る。もう、逃れようがなかった。

「へぇ……裕樹が、ね」
「あ、あああ、あの、お兄ちゃんっ」

 顔を真っ赤にして怒鳴り散らすのも怖いかもしれないが、僅かな表情の変化で、声を低くして静かに怒られるのも―――怖い。
 そして、直樹は正にその状態だった。
 立ちのぼる怒りのオーラに、裕樹の肝っ玉も縮むというもの。
 裕樹はまた小さく息を呑むと、背中にじっとりと汗を掻いた。
 
(まずい、このままじゃ間違いなく……殺られるッッ)

 裕樹はゴクリと大きく喉を鳴らし、円らな瞳を向けてくる琴美に何故か正座で向き合った。
 小さな肩にそっと手を置き、好美を口説くときでもそんな真面目な顔はしまい、というような顔で琴美を覗きこむ。

「いいか?琴美。パパは僕じゃない。パパは、お兄ちゃんだ」
「にーちゃ?にーちゃ!」
「あああ、そうじゃなくって!!」

 どうやら、裕樹と紀子が直樹を「お兄ちゃん」と呼ぶせいで、直樹のことを「お兄ちゃん」という名前だと思っているらしい。
 子供が出来ても琴子は変わらず「入江くん」と呼んでいるし、そういえば誰も直樹を「パパ」と呼んでいないのだった(余談だが、重樹は琴美が生まれた時点でじぃじ、と呼び名が変わっている。)。

「いいか?お兄ちゃんが、琴美のパパなんだ。僕は裕樹。裕樹お兄ちゃん、いいか?」
「ぱぁぱ。ぱぱ」

 琴美はちょこん、と首を傾げる。
 この瞬間も裕樹を襲う、北極の風……もはや、裕樹の命は風前の灯だ。

「どうやら、琴美といい琴子といい、随分お前に世話してもらってるようだな?」
「え、え!?いや、琴美はともかく別に琴子は……」

 ぽん、と置かれたはずの直樹の手なのに、ギリギリと込められた力のせいで痛みを覚える。

(折れる!肩の骨折れる…!!)

 裕樹はカラカラに乾いた口を何とか動かし、兄の怒りを鎮めようと必死だ。
 だが、直樹はにっこりと綺麗な笑みを浮かべるだけで、取り合ってくれない。

「……琴子。話があるから、部屋行ってろ」
「え゛。あ、あたし!?」
「そう。じっくり話したいことがある」

 顔を引き攣らせる琴子の腕を取ると、直樹は次に琴美を覗きこんだ。

「琴美?パパはママと話してくるから、裕樹おじさんと待っててくれるな?」
(……お兄ちゃん、今さり気なくおじさんを強調したね…)

 今度から自分で「裕樹お兄ちゃん」と言おう、と心に決める裕樹。
 何も知らない琴美は、きゃっきゃと笑っている。
 そして琴子が引きずられるようにして夫婦の寝室に連れ去られた後、裕樹は先ほど直樹に掴まれ、じんわりと痛む肩を押さえながら風呂に入ることにした。
 お供は琴美だ。
 慣れた手つきで琴美を風呂に入れながら、裕樹はそれはそれは真剣な顔で琴美に言った。

「琴美、いいか?二度と僕のことをパパなんて言っちゃいけないぞ。でないと……」
「ぱぁぱ?う?」
「だから……」

 無邪気な琴美の変わらぬ呼び方に、裕樹はがっくりと肩を落とした。
 お前ここでしっかり仕込んでおけよ、と、肩に残った直樹の指痕が裕樹に脅しをかけている。
 故に。
 裕樹はその後数日にわたって、必死に琴美に「パパが誰か」を教え込むのだった。




 ちなみに、その晩はそれ以降兄夫婦を見かけず。
 琴美は紀子たちの寝室で眠り、琴子は翌朝プルプルと膝を笑わせていたという……。



END




大人げない男…好きです。ただし、入江くんに限るんですけど♪


…と、復帰第二弾の被害者(?)は裕樹くんになりました。
とばっちり的に入江くんの嫉妬を食らう裕樹くん、好きです(笑)。


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はじめまして♪ 

実はかなり前からお邪魔させて頂いていました。とんでもなく忙しいであろう時期に、稚拙なコメントを残すことも憚られましたが、また素敵なお話の更新で嬉しくなってコメントさせていただきました。
遅くなりましたが、ご出産おめでとうございます。そしてお帰りなさいませ。今回もとっても心が温かくなるようなお話をありがとうございます。日々充実してて忙しいとは思いますが、時間と体力が許せるときがあれば、是非また素敵なお話を拝見させてくださいね!直樹と琴子がその後どんなお話をしたのか、気になってるのはあたしだけじゃないはず…♪ふっふっふっ♪

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NoTitle 

こちらも以前から拝見させて頂いております。いつも楽しいお話を有難うございます。私もぱぴよんさんと同じく夫婦の寝室でのお話が楽しみです!

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>玉子様 

>玉子様

なんと有難い習慣!!ありがとうございます~(>▽<)

裕樹くんが被害者だと、筆の進むことったら(酷)!西垣先生もいいですよね……ふふふ(笑)
私も兄弟なのに嫉妬されている裕樹くん、そして裕樹くんなのに嫉妬しちゃう入江くんが大好物です♪いいですよね!
きっと琴子ちゃん、育児に疲れているのか、別のコトで疲れているのか、もはや区別つかないんじゃないでしょうか(笑)

お気遣いありがとうございました。
節電の夏、と言われて久しいのですが、さすがに今年だけは、と日中もゆるゆるとエアコンを使用して乗り切っております。早く喋れるようになって、暑いとか、もう無理、とか言ってくれるようになるといいんですが(^^;
お盆中に何か1つ、と思っておりますので、その時はよろしくお願いいたします!

>彩様 

>彩様

おじさんとして良くしているだけなのに、嫉妬ブリザードの餌食になる裕樹くん(笑)
膝が震えるって、一体何をやらかしたんでしょうね。入江くんは♪
鍵付ですね?ふふ、ふふふ……久々なので緊張しますが、実は書き始めました!出来上がったらアップさせていただきますね~♪

>ぱぴよん様 

>ぱぴよん様

はじめまして!初コメありがとうございます!!嬉しいです!!

お蔭さまで無事帰宅し、こうしてお話をアップすることができるようになりました。
二人がこの後どうしたのか、鍵付で!という嬉しいお声を頂戴したので、ちょこちょこ書き進めております♪久々だから、入江くんが止まらない…(笑)。
出来上がったらアップしますので、またよろしくお願いいたします♪

>ぴろりお様 

>ぴろりお様

うわ~~ん、ご無沙汰してしまって申し訳ありません~(><)!!
ああ、それなのにこんな温かいコメントを……ううっ(感涙)!

琴美ちゃん、この頃から無邪気に爆弾を落としていたようです(笑)。しかもピンポイント、誤差なし!
シリアスなネタが最近全く浮かばず、日々時間に追われているせいかのんびりしたお話が書きたくて(笑)そうしたら、裕樹くんが犠牲になってしまいました♪
ニヤッとしちゃう新作、頑張りマス!

>ちぃ様 

>ちぃ様

お気遣いありがとうございます♪
もう地球さんゴメン、と平謝りしつつ、今年ばかりはゆるゆるとエアコンを使わせていただいております~。
ですので、例年の夏より元気かも(笑)。

青筋立てた大魔王…それです、それ!まさに入江くんはそんな感じで、裕樹くんと琴子ちゃんの背後にいたと思われます(笑)。好美ちゃんが癒してくれるといいんですけどね…ふふふ♪
琴子ちゃんももれなくバンビですし、入江家は今日もとっても元気です!

>kazigon様 

>kazigon様

初めまして!以前から見ていただけていたとのこと、嬉しいです。ありがとうございます(^^)
夫婦のお時間ですね♪
ただ今、張り切る入江くんを押し留めつつチョコチョコ書き進めております。もうしばらくお待ちくださいませ♪リクありがとうございました!

>marimari様 

>marimari様

初めまして!
今でこそパソコンを使い、こうしてブログを利用して二次創作の世界に居させていただいていますが、以前はmarimari様と同じく、パソコンなんてよくわからない代物でした。新しい世界というより、なんか変な世界に繋がってしまって、変なことに巻き込まれたりしちゃうんじゃないの?なんて思ったりして。
ですので、怖いというお気持ちすごくよくわかります。それなのにコメント寄せていただいて、本当に嬉しいです。初コメ、ありがとうございます!

お気遣いもありがとうございました(^^)
マイペースでも続けて行けたらと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします!

>ひろりん様 

>ひろりん様

先日はメールありがとうございました!嬉しくて、心がほっこりでした♪
赤ちゃんのいる環境、滲み出てます?(笑)そこはかとなく乳臭く、ヨダレ臭く……そして時にオムツの匂いを纏いながら書いておりました(笑)。
寝室に籠城(させられた)した琴子ちゃんは、きっと何故あたしが!!と思いながら、美味しく楽しく(!?)食べられたことと思われます。入江くん、張り切ったんだろうなぁ…そうだといいなぁ(笑)なんて。
嬉しいことに、他にもリクを頂戴いたしましたので、ただ今ちょこちょこ妄想中です♪
出来上がったらアップしますので、またよろしくお願いいたします!

>おばちゃん様 

>おばちゃん様

お忙しい中ありがとうございます~!!
睡魔には勝てませんよね。いえ、あれは勝っちゃいけないんだと思います。必要だから襲ってくるんですもん。
おばちゃん様も無理なさらず、お体大切に過ごされてくださいね。
私もボチボチでも、お話アップしていきます♪

>りーちゃん様 

>りーちゃん様

はじめまして!初コメありがとうございます。
以前から見てくださっていたとのこと、嬉しいです(^^)。

そしてそして……ふふふ、リクもありがとうございます♪皆様から嬉しいお声をいただいて妄想したら、入江くんが張り切ること、張り切ること!ただ今必死に抑えていただき、ちょこちょこではありますが、書き進めております♪完成まで今しばらくお待ちください~。頑張ります!

>ゆっちゃん様 

>ゆっちゃん様

裕樹くんには申し訳ないけれど、敬愛するお兄ちゃんに嫉妬される彼が可愛いやら何やらで、被害が止まりません(笑)。
入江くんのヤキモチ、こういう他愛ないものなら私も大好きです♪いいですよね!

お気遣いありがとうございました。暑さに負けないよう、頑張ります~(^^)

>あけみ様 

>あけみ様

裕樹くん、せっせと姪っ子のお世話をしていたのにヤキモチ焼かれて、ブリザーとの餌食に…(笑)。
膝が笑ってたって、一体入江くんはどんな体位…げふごふっ。

確かに夏の子育ては、たくさん着せなくていいし楽な面もあると思いますが……同じく、キツイという印象です。今回、あけみ様のご長男の誕生日+6日ですので、ほぼ同時期ですよね。うちも今、めりこんだ首(笑)の皮膚の重なったところに汗疹が酷くて、早く秋よ来い!と思っております(^^;
オムツも臭うし…(-”-)
お気遣いありがとうございました!夏もあとひと月ちょっと。あけみ様も無理なさらないでくださいね!
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