*初恋*

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 夏的恋愛二十題-10- 夏的恋愛二十題-11-
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「お題」
夏的恋愛二十題

夏的恋愛二十題-10・2-

 
 夏的恋愛二十題-10- 夏的恋愛二十題-11-
10.熱中症の君に膝枕 -結婚後ver.-








「相原ーっ、何をぼさっとしとるかぁ!」

 遠くから飛んできた須藤の檄に、草むらで玉拾いをしていた琴子は口を尖らせた。

「っもう、入江だって言ってるのに」

 ようやく入籍も済ませ、晴れて入江琴子になったというのに、相変わらず須藤は琴子を「相原」と呼ぶ。
 今さら変えられない、というのが理由だろうけれど、琴子は面白くなかった。
 ぶつぶつ文句を言いながら、籠に球を集めていく。
 がさっと茂みを揺らした時、茂みの向こうで直樹が行う試合が見えた。こうして直樹を見ることができるだけでも、玉拾いの価値はあると思う。

「入江くん!」

 スパーン!と気持ちいい音がして、直樹のスマッシュが決まった。それを受けるのは松本裕子。
 悔しいけれど、直樹のスマッシュなど琴子は受けることもできない。
 琴子はかっこいい王子様のような直樹を、うっとりと見つめた。
 やがて試合が終わったのか、直樹と松本がネット越しに握手を交わす。
 琴子はその場に籠を置いて、直樹のところへすっ飛んで行った。





「入江く~ん!」

 ぼふっと音を立てて抱きつくと、直樹が鬱陶しそうにその手を振り払った。
 汗を掻いているところに貼りつかれて嬉しいはずがない。結婚したからといって甘く豹変することもなく、淡々と「入江直樹」のままである直樹に、琴子はぷぅっと頬を膨らませた。
 そんな琴子を、直樹は呆れたように見下ろす。
 今日も暑い。
 それはもう日常になりつつあるくらい毎日のことで――琴子は今日も、いまいち顔色が冴えなかった。
 クーラーにも弱いが、暑さにだって弱いのである。
 だというのに、恐らくまたしても水分をきちんと摂ってないに違いない。
 直樹は自分が持っていたスポーツドリンクを飲ませようと、鞄に取りに行った。

「なんだぁ、相原。お前さっそく旦那に張り付いてるのか」
「いいじゃないですか、新婚なんだもん」
「お前らが新婚ねぇ?」

 どうも、いまいち信じられないのか。それとも単に、一人恋を実らせた琴子が羨ましいのか。 
 口元の髭を撫でつけながら、須藤はきらっと目を光らせた。

「新婚でも何でも、玉拾いをさぼることは許さーん!ほら、さっさと行ってこい!」
「えええ、須藤さんの意地悪~!」
「どうせ家に帰ったらイチャコラ出来るんだろうが!」

 あの直樹が、家に帰ったくらいで豹変するなら苦労はない。と思う琴子ではあったけれど、直樹は自分を振り払って荷物の方へ行ってしまったし、琴子は仕方ないか、とまた草むらに足を向けた。
 その琴子を、スポーツドリンクを手にした直樹が呼び止める。

「おい、どこ行くんだよ」
「どこって、玉拾い。まだあの辺りいっぱい残ってるの」

 先ほどまで自分がいた場所を指さし、琴子はにこっと笑った。
 以前倒れた時ほどではないが、顔色も冴えないこの琴子を、このまま放置することはできない。

(ったく、あの時松本に怒られたんだろうに…須藤さんも懲りない人だな)

 直樹はため息をついた。あの時、琴子が倒れても自分は運ぶだけだった。
 だが、今もし琴子が同じことになったら、今度須藤を責めるのは間違いなく自分だろう。その時、松本のように手加減して“叱って”やることなどできないと思う。
 自分の性格はよくわかっているのだ。
 相変わらず何も気づいていない須藤は、琴子と直樹を見比べてしたり顔で頷いている。

「おう、入江。お前ら本当に結婚したのか?ってくらいさっぱりしてるよな」
「…そうですか?」
「ああ。相原に飽きても松本には近寄らないでくれよ!」

 がはは、と笑う須藤は、本当に何も考えていないんだろうと思われた。琴子がむっと顔を顰め、そんな日はきません!と怒っている。
 直樹はと言うと、この人の目はやはり節穴か、と呆れていた。
 もはやまともに相手をする気も失せ、直樹は琴子に持ってきたスポーツドリンクを差し出した。

「ほら、飲んどけ」
「え?いいよ、まだそんな喉乾いてないし」
「背中びっしょりだろ。気付いてないだけで、体は水分を欲しがってるはずだ」
 
 直樹は言いながら琴子の背中に触れた。テニスウェアはしっかり湿って、琴子の華奢な背中に張り付いている。
 やっぱりな、と直樹は自分の判断を褒めたい気分だ。
 これだけ汗を掻いているのに水分を取らなかったら、二の舞になるのは間違いない。
 だが琴子は、ペットボトルに入った残りが少ないことが気になるらしい。直樹とペットボトルを見比べ、首を横に振った。

「入江くんのがなくなっちゃうからいいよ。あたし後で買うから」
「俺はさっき飲んだからいいんだよ」
「でも、試合したばかりじゃない。あたしなら玉拾いしかしてないし」

 直樹を一番に考える琴子は、自分のことが疎かになることが儘ある。
 この時もそうで、直樹の手にスポーツドリンクを返してきた。
 よせばいいのに、こういうタイミングで茶々を入れるのが須藤という男だ。

「入江、相原はいらないって言ってんだし、いいじゃないか。ほれ相原、行け行け」

 さっさと追い払うように手を動かす須藤を、直樹がじろっと睨む。
 そしておもむろにスポーツドリンクを呷ると、琴子を抱き寄せた。
 
「え、入江く―――」

 直樹の唇が重なる。
 深く重ねられた直樹の唇から、琴子の唇にスポーツドリンクが流れ込んだ。こくっという音がして、琴子が与えられた水分を飲み込む。
 その様を、須藤をはじめとしてテニス部の全員が見入っていた。
 直樹と琴子の結婚を、どこか物語のように架空の話としてとらえていた人々が、あんぐりと口を開けている。
 
「やっ……いり」
「まだ残ってる」
「んぅ…っ」

 ぐっと直樹が身を屈めると、支えきれなくなった琴子が縋るように直樹の首に腕を回した。琴子の体が宙に浮いて、直樹の腕がそれを支えている。
 ペットボトルに残っていたスポーツドリンクを全てそうして琴子に与えると、直樹はようやく唇を離した。
 スポーツドリンクと唾液に塗れた琴子の唇から、飲み込み切れなかった一筋が零れるのが、妙に扇情的で。直樹はその僅かな水分でも逃さないとばかりに、舌でそれを舐め取った。

「っ……いりぇくぅん…」

 固く尖らせた直樹の舌の動きに敏感になった琴子が、蕩けたような声を出す。それでも本人はいつも通りの声で、直樹を止めているつもりらしい。
 だが実際のところ、すっかり腰砕けになってしまった琴子は、ほんのりと頬を染めて直樹に縋りついていて、制止の声など何の役にも立たなかった。
 琴子を抱いたまま姿勢を正した直樹が、ふんっと鼻息をついて琴子を見る。

「ったく、だから(自分で)飲んどけって言ったのに」

 それは、琴子のせいなのだろうか? 
 誰もがそう思ったが、当然誰もが口にすることはできなかった。
 松本に対し、これと言って攻めきることもできない須藤にも刺激が強すぎたようで、神聖なコートで、と唸りつつも、微動だにすることもできない。
 直樹はちらっとそんな須藤を見ると、琴子を横抱きに抱き上げた。
 今日は熱中症ではないけれど、すっかり逆上せてしまっているのに変わりはない。

「また倒れても困るんで、少し休ませてきます。試合、俺の代わりに松本の相手をどうぞ」
「お、おう…」

 羞恥に顔を上げられず、ただ自分にしがみつく琴子にいたく満足しながら、直樹は人目も気にせずテニス部の部室へと入って行った。
 一連のことを呆れたように見ていた松本が、はぁ、とため息をつく。
 素直に琴子が心配だと言えばいいし、須藤にはきちんと休憩を与えろと言葉で言えば済むというのに―――。

「未だに信じない人たちへの見せつけもあるのかしらね」

 ぽつりと呟かれたそれは、恐らく的を得ているだろう。
 松本はパンパンと手を叩くと、当てにならない須藤の代わりに声を張り上げて部員たちを叱咤した。

「さぁ、あの二人は放っておいて、私たちは練習よ!」

 まるで時が停まっていたかのような部員たちが、その言葉に弾かれたように動き出す。 
 揃って時折部室の方を気にしているのはわかっているが、きっと誰も近づかないだろう。
 馬に蹴られるのはゴメンだし、何より、直樹に蹴られる(睨まれる)のはもっとゴメンなのだから。

「須藤さんも、しっかりしてください!部員の体調管理も、本来ならあなたの仕事でしょう!」
「ま、松本ぉ~」
「一度相原さんを危険な目に遭わせておいてまだ懲りないなんて」
「いや、そんなつもりはなくてだな」
「学習しない男は嫌いです」

 ぴしゃりと跳ねつけて、松本は直樹に次いで腕のある部員に声をかけた。
 それから、別に直樹に蹴られることなど何とも思わない松本が、興味本位半分、現状確認の意味半分で部室の窓から中を覗いてみる。
 須藤が使い物にならないのだから、それも松本が確認しないと、いらぬ騒動の元になりかねないからだ。
 そんな考えで窓から目だけ覗かせた松本は、少しだけ目を見開いた。

(あらまぁ)

 そこには、琴子に膝枕をしてもらって大人しく目を閉じる直樹がいた。

「い、入江くん~、どうして顔を下に向けてるの~…」

 困り果てた琴子の情けない声を聞きながら、松本は踵を返す。
 これ以上見続けるような野暮はしない。
 まさかここで致すことはないと思うけれど、いらぬ騒ぎを起こさないためにも、練習終了はせいぜい大きな声で告げて、彼らに気付かせなくてはならないだろう。

「全く、やってらんないわね」

 それは、斗南大テニス部のある夏の日のこと。
 程なくして、ラリーの音や掛け声が聞こえはじめ、とある一室を覗いてはすっかり元の部活動の光景が戻ってきたのだった。





END



はい、ってなわけで!
膝枕結婚後バージョンです♪書いた作品の別バージョンも見てみたい、と言っていただけるのは嬉しいもので、これも楽しく妄想させていただきました。
が、いただいたコメにありましたのはですね…。

  (いただいたネタ)    →   (書き上げた現実)
○熱中症で倒れた妻を優しく看病→倒れる前に優しく襲い掛かる(あれ?)
○朦朧としてて水を飲めない琴子に口移しで水を飲ませる→水を口移しで飲ませて朦朧とさせる(逆…?)

おかしい……どこかで間違えたとしか思えない。
こんなことになりましたが、楽しんでいただけると嬉しいです(^^)


お題配布元:TOY様
 
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>ぴくもん様 

>ぴくもん様

さらなる萌えに進化…できてますでしょうか!?自分では、段々とズレていくのが恐ろしかったのですが(^^;
琴子ちゃんは入江くんが常に一番、自分のことは2、3番を通り越して4番くらいにしか思ってない琴子ちゃんですので、入江くんも気が気じゃないと思うんですよね♪その分自分が見てやらなきゃ、というのは、もはや父性愛に近いかも!?
松本姉が好き過ぎて、今回も重要なポイントを任せることになりました。ああいうライバルはカッコよくていいですよね♪アニメではまぁ、松本姉が病気になったこともあってそれなりに男を上げたようですが、原作ベースだと……私的には、ガッキーのがまだマシってなくらいの位置づけです(笑)。私も原作だけ見て、この二人の明るい未来は想像しにくいです~。

スコートなのに顔を下にしてる入江くん……野獣寸前です(笑)
赤くなって困り果ててる琴子ちゃんを見たいだけとはいえ、初心な琴子ちゃんはたまったもんじゃないかと。
こんな彼には、一度痛い目を見てもらわねばならないかも!?

>あやみくママ様 

>あやみくママ様

あやみくママ様に背中を押していただかなかったら、きっと自分の中だけで終わらせていたと思います。いただいたコメントからは横道にそれた感が否めませんが、それでも楽しんでいただけたのがわかって安堵いたしました♪温かいメッセージ、ありがとうございます!
ご家族にドン引きされてしまうほど、あやみくママ様に楽しんでもらえたんだってもうと…私としては、ニヤッとしたい気分です(^^)潤いは二次でって、まるで標語みたいですね(笑)その萌えに応えらえるよう、これからも精進したいと思います♪

>narack様 

>narack様

羞恥心をママのお腹の中に忘れて生まれてきた人なので(笑)
今回、松本姉が冷静なツッコミを入れてくれるので助かりました。でなかったら、みんな唖然茫然でまとまらないったら!
いつまでも入江くんが一番で自分のことが疎かになっちゃう琴子ちゃんと、そんな琴子ちゃんを常に心配してる入江くん。口には出さないかもしれませんが、彼なりの愛がありますよね♪
今回ぜひ結婚後でも!と言っていただけて楽しく書かせていただいたのですが、narack様にも楽しんでいただけて嬉しかったです(^^)こちらこそ、ありがとうございました!

>ちぃ様 

>ちぃ様

なんてもったいないお言葉を…!ありがとうございます~!!
青い入江くん、私も大好きなんですが、このベタ甘にはならない甘さの入江くんもオツですよね♪
素っ気なくて周囲も「本当にあの二人結婚したの?」と思ってる中、実は琴子ちゃんしか見えてないところがツボで。キスはオマケ、とか思いつつ、最近流行りの「オマケがメイン」のお菓子状態になってる可能性は否めません(笑)。
私もちぃ様に見ていただけて嬉しいです。また次のお話も見に来てくださいね。お待ちしております(^^)

>紀子ママ様 

>紀子ママ様

嬉しいメッセージ、ありがとうございました♪
私の須藤さんへの密かな鬱憤にシンクロしてくださって、それもまた嬉しくて!
水分取るのって難しいですよね。きっと琴子ちゃんも、まだ大丈夫、あとちょっとなら、と思いながら頑張っちゃうタイプなのではないかと思っています。
そんな琴子ちゃんを、入江くんは大事に思ってますからね。ええ、口には出さなくても、恋女房ですから♪
松本姉もそんな二人と、使い物にならない須藤さんに挟まれてまとめ役…今回一番の功労者かもしれません(笑)須藤さんも、もうちょっと男を上げないと松本姉はゲットできないぞ~と思っております(^m^)フフッ

>むさぴょん様 

>むさぴょん様

そう、その通り!神様俺様入江様、なのです(笑)
誰が見ていようと、口移しで飲ませた方が早いと思ったら迷いナシ。決断力もありますよってところでしょうか。
これからバージョンアップすると、最終形態は野獣です。
なんていうのかな…RPGのラスボスみたいな。よっしゃ倒した!と思ったら「ふははは、まだまだ甘いな」とか言われて第二形態が、それを倒したかと思ったらまたしても「ふはははは…」となって、やたら強い必殺技を出してくるのです。野獣直樹はそのくらいの威力を持っていますが、勇者琴子はそんな野獣に惚れてるので永遠に勝てない(平和が来ない!?)という…。

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>吉キチ様 

>吉キチ様

入江くんの態度が態度でしたから、酷い男のレッテルを貼られて久しいですもん。ここらで1つ、宣言しとかないと…とか思ったんだと思います、このツンデレは(笑)。

寸止めまでやっちゃいますかね!?あわわ……ひ、否定しきれないっ!
帰宅後すぐ襲いかかるわけですね、納得です(^m^)
上のお顔じゃなくて、下の息子さんのお顔を見れば考えていることが一目瞭然ってことですね!
琴子という甘味を求めて……暴れてそうな気がしてきました(^^;
松本姉、今すぐそこのツンデレを止めて~と叫びたくなってきました(笑)

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>あやみくママ様 

>あやみくママ様

愛の栄養分は豊富そうですけど(特に入江くんの場合は♪)どうでしょうね~(笑)。
琴子ちゃんは「苦くてちょっと…」と思ってそうですよね。なのに、入江くんのだからって頑張っちゃうんですよ、多分!そして入江くんは、そんな琴子ちゃんが可愛くて仕方ないといいです♪

にしても、栄養不足って(笑)!!須藤さん、フラフラになってる琴子ちゃん見てあげて!違うってわかるから!と思わずツッコミ入れてしまいました(笑)
改めてお話を楽しんでいただけて嬉しいです。本当にありがとうございますi-175
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