*初恋*

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 夏的恋愛二十題-17・後- 夏的恋愛二十題-19-(加筆修正2)
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「お題」
夏的恋愛二十題

夏的恋愛二十題-18-

 
 夏的恋愛二十題-17・後- 夏的恋愛二十題-19-(加筆修正2)
18.暑さで食欲が湧きません









 暑いと言って、ぐったりしていたのは間違いなく琴子。
 俺はと言えば、暑いは暑いが口にすれば尚暑く感じるのはわかっていたので、黙っていた。
 もうすぐお昼時だが、琴子は看護科の勉強も捗らないのかぐだぐだと机の前で時間を潰していた。だが、何を想ったのか急に勢いよく顔を上げると、いいこと思いついた!と声を上げた。
 ったく、相変わらず突拍子もない奴…。
 俺は足音もけたたましく階下へと走っていく琴子の出て行った後を見て、小さくため息をついた。
 こういう日に限ってお袋がいなくて、嫌な予感しかしないんだ。
 




 で、今に至るんだが。
 ドーンと用意された、これは……なんだ?
 
「入江くん、どうしたの?」

 どうしたのって、お前。
 昼飯だと言うから下りて来てみれば、出されたのは得体の知れないプレート。これで驚くなと言う方が無理だ。
 だが、琴子は満面の笑顔だった。
 いいことを思いついた、のいいこととは、どうやらこの事だったらしい。
 ちっともいいことに思えないのは、俺の常識から琴子の行動が外れているからだ。一体この得体の知れないプレートの、どこがいいのだろう。
 琴子はニコニコしながらダイニングにつくと、俺より少しだけ量を減らした(でもやっぱり並んでいるものは同じもの)プレートを前に、ぱんっと手を合わせた。

「琴子ちゃん特製ランチプレート、いっただっきまっす♪」

 …そうか、これが昼飯なのか。
 勢いよく下に下りてから、なんだかキッチンでガチャガチャやってるなぁとは思っていたんだが…まさか、こんなもんを作ってるとは思っていなかった。
 作った本人は満足してるし、きっと俺の目とは違って美味そうにも見えているんだとは思うが。

「これ、食えんの?」
「おいひいよ?」

 スプーンを口に入れたまま喋んな。
 俺は覚悟を決めて、フォークを手に取った。
 プレートに乗っているのは、オムライスとウィンナー、マカロニサラダ(多分)とプチトマト。
 これでハンバーグでもあれば完璧なお子様ランチなんだろうが、壊滅的に料理の苦手な琴子がこの品数を用意しただけでも進歩したもので、ハンバーグまで求めるのは酷というものだろう。
 お袋がいたわけじゃないんだし。
 つか、おかずが一品増える=腹を壊す可能性が高まるということだから、これでいいんだけど。



 しかし、その琴子が作ったものもツッコミどころは満載だ。
 俺はまずウィンナーを見た。

「…スプラッタ?」
「違うわよっ、タコさん!」
「タコ……」

 そうか、これはタコだったのか。
 俺は無残にも、胴体部分と足部分が千々にちぎれたウィンナーを見た。
 お袋は料理が趣味の一つだから、包丁一つとってもきちんと手入れをしている。切れ味は悪くないはずだ。
 その包丁を使っているはずなのに、どうしてこうも切れ目がギザギザしてるんだ?このせいで余計に無残さが増している。
 まあ、見かけはいいか。
 とりあえず口に放り込むと、素材の味がした。つまり、味付けらしい味付けはないということだ。
 まあ、下手に味付けされて塩っ辛かったりするよりはマシだから、これでいい。
 


 俺は次にマカロニサラダを見た。
 マカロニっていろんな形があるけど、これは……元はなんだったんだ?
 
「お前、マカロニをみじん切りにしたの?」
「ううん。茹でただけ。混ぜてるうちになんでか知らないけど…」

 つまり、茹ですぎたってことだな?
 俺はアルデンテなんて知りもしないようなマカロニと、逆に茹で時間が足りなかったらしい妙に固い人参を口に入れた。

「あ、入江くん。ちゃんとキュウリも食べて!」
「あのな……お前、これは嫌がらせか?」
「っもう~、好き嫌いはダメですよ?」

 何を知ったような口きいてんだよ
 そういうのは、薄切りが出来るようになってから言えっての!!
 俺は厚さ2cmはあろうかというキュウリを、ぽいぽいっとプレートの端に避けた。ちゃんと薄くスライスされてサラダになってるならともかく、キュウリそのものを口に入れるような真似、できるはずねーだろ!
 琴子は俺のそんな行動はお見通しだったのか(それはそれでムカつくが)俺が避けたキュウリを口に入れていく。
 こんな青臭いもん、よく食えるよな。
 俺は邪魔なキュウリのいなくなったマカロニサラダを口に運びながら、そこだけは感心する。
 しっかし……固い人参だな。生のままぶち込んだんじゃねーか?


 次に待ってるのは、このプレートのメインであるオムライスだった。
 何をどうしたらこうなるのかわからないが、べちゃべちゃになったライスの上に、下がやけに焦げた卵が乗っている。
 ご飯を包んではいない。琴子にそんな芸当ができるはずがないからな。
 卵焼きを一枚で焼けただけでもヨシとすべきだろう。片面が焦げているのは、ひっくり返す腕がないからだ。
 当然、フライパンの端に寄せてふんわり焼くなんてことは、知識としても持ち合わせていないに違いない。
 琴子は俺がフォークからスプーンに持ち変えたことに気付いたようで、にこっと笑った。
 
「それ、入江くんの顔なんだよ♪上手でしょ?」

 へぇ、これが……ねぇ?
 俺はでろ~んと気味悪く垂れたケチャップで描かれた顔を見た。これが俺だと。ほほう。
 ケチャップが垂れてるのはともかく、なんだか妙に目つきが悪くて人の悪そうな笑みを浮かべてるんだが。
 お前の中で、俺はこういう顔なんだな?

「その涼しげな目元が難しかったの~」
「……お前、一度眼科に行って来い」
「なんで?」

 俺の目には、どう見ても「涼しげな目元」には見えないんだが。
 まあいいか、と俺はオムライスを口に入れた。
 予測した通りの味だ。
 あれだな、美味いだろうと最初から期待してないから、普通に飲みこめるものであっただけでも感謝してもいいような気になってくる。
 ハードル低すぎだろうか。




                                       ***************


 


 量だけはある「琴子特製ランチプレート」を何とか食べ終え、俺は食後のコーヒーで胃を落ち着かせていた。
 琴子も向かいでマグカップを傾けながら、ニコニコしている。

「なんか暑さで食欲ないなぁって思ってね。けど、せっかく入江くんと二人だし、楽しい食事がしたくて。ふふっ、結局全部食べちゃったね」
「…食欲なかったのかよ」
「うん。暑くて冷たいものばっか食べてたから、胃が疲れちゃってたのかも」

 あの奇妙な取り合わせでは、別の理由で胃がおかしくなるんじゃないかと思ったが、賢明にも黙っていた。
 下手なことを言って、リベンジなどと言われては敵わない。

「また作ってあげるね!」
「……遠慮しとく」

 俺だって暑さで食欲が湧かないんだ。
 それでも完食したのは、琴子が俺のために一生懸命作ったことがわかるから。
 料理本を見てるのに料理も作れなかった高校の頃からしたら、少なからず進歩してるしな。
 俺も甘くなったもんだ。
 だが、俺の心琴子知らず。
 琴子はきょとん、と大きな目を瞬かせると、次の瞬間楽しそうに笑ったのだ。

「入江くんったら、照れ屋さんなんだから!」

 お前…。
 そのポジティブ思考、いい加減にしろ!!



END







だからどうした、な入江家若夫婦のある日の一コマでした~。
入江くんは、琴子ちゃんの作ったものなら結局食べると思うに一票。


お題配布元:TOY様
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~ Comment ~

賛成! 

はい、私も「琴子の作った物なら何でも食べる!」に1票です笑!
ほのぼのとしたお話で笑わせて頂きました!
入江くんはなんだかんだ言っても、琴子の言う事、する事、それが、奇行でも許してしまうんですよね~笑。そんな貴方も、とっくに、「ポジティブ主義者」よ!と教えてあげねばくくく・・・。しかし、「暑いからそうめん」なんて私みたいな横着せず、考えず、わざわざ、手の込む、スプラッタ風タコさん笑やら、みじん切りマカロニ笑サラダ、入江くんのこわ~い顔入笑りオムライスまで作っちゃうんだから、愛感じちゃうわぁ~。あははは・・・。
次作も楽しみにしています。

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>REE様 

>REE様

一票ありがとうございます!
そして、言われてみれば確かに入江くんだってポジティブですよね(笑)きっと微生物みたいなおかずが入っていても「なんだこれ」の一言と共に食してしまう気がします。

次作は書いた自分でも思いがけないシリアスです。
お眼鏡に適うといいなと思いつつ……ドキドキ。

>ちぃ様 

>ちぃ様

ちぃ様からも1票いただきました。ありがとうございます♪
そうそう、琴子ちゃん以外の女の子が作った物なんて、彼にはなんの価値もないですよね。作った子には可哀想ですけど…。
琴子ちゃんが作る=その時間は、少なくとも俺のことしか考えてない、というのが入江くんを満たしているのではないかと(^^)
物とかじゃなく、心の中でばっちり溺愛な入江くんを楽しんでいただけてよかったです♪

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偉い!昔の入江君なら 絶対食べなかったであろう品々
固い人参 ちぎれたウインナー べちゃべちゃで焦げた オムライス 御愁傷様です 笑 自分で作ったら一流シェフ並みの腕なのに 琴子の愛情入りだと思うと 完食する入江君! 本当に丸くなりましたよねぇ!

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>narack様 

>narack様

narack様からも一票いただきました~♪ありがとうございます!
入江くんのわかりにくい愛情にキュンキュンしております♪

琴子ちゃんのランチプレートはすごいですよ~(笑)タコのスプラッタはですねぇ、何故か切断面がギザギザ。でもって、あちこちもげる寸前なのです。
だもんで、口に入れる前にチェックしないと怖くて食べられません。2cmで精いっぱいな琴子ちゃんです(笑)
そのままキュウリ齧ればよくね?というくらい分厚いですよね(^^;
入江くんも「なんだこれは」と思いながら、琴子ちゃんの愛情を噛みしめていたことでしょう。ちょっと苦みのあるオムライスとかで。ぷぷっ!

PS:届きました~!ありがとうございます、もう幸せいっぱいです(>▽<)/

>ぴくもん様 

>ぴくもん様

そう、愛なんですよね、愛!あの入江くんが「愛」なんですよ!
なのに、いちいち確認しないと口に入れない入江くん(笑)つべこべ言わずに食べろ、とは言えないですが(^^;
オムライスの行で不穏な響きを感じ取るなんて、ぴくもん様、さすがです♪
目を細めて「ほほう?」なんて言われたら、普通の人は「ひっ」と息を呑むところだと思います(笑)

ところで、スライサーでスライスですか!?それは怖い……でも、わんわん泣いてるぴくもん様を想像したら…か、可愛いっ!!
確かにそれは、琴子ちゃんもやってそうです。で、入江くんが血相変えるという。「何やってんだ、馬鹿!」と怒る姿が目に浮かぶようです。
結婚もそうですが、そもそもポジティブじゃない琴子ちゃんじゃ、入江くんだって惹かれなかったくせに何いってんだって話ですよね(^m^)フフッ

>さくら子様 

>さくら子様

ああ、わかります!昔の入江くんなら「いらない」の一言で無視してそうですよね!
なのに今では……自分で作らず、まずいとわかっていても琴子ちゃんの用意したものを食べる。
本当に、愛ってスゴイです(笑)

>あやみくママ様 

>あやみくママ様

ですよね、ですよね♪胃袋がドMって(爆笑)!
よく男性を胃袋から落とす、なんて話も聞きますが、一般的な意味とは違った意味で、入江くんも胃袋から落とされてたんですね、知らなかった~(^m^)ププッ
ぜひぜひ入江くんの胃袋のために祈ってあげてください(笑)
私も心をこめてお祈りします♪

>hitomi様 

>hitomi様

あはは、確かに!これは間違いなくバカップルですね♪
そして、そう言えば料理を褒めてくれる男性って少ないかもしれないな、と思いました。さすが入江くん、琴子ちゃんに関することだとものすごい警戒心…じゃない、愛情を見せてくれますね(笑)

そしてそして、あのヒロインちゃんですね!私、あのマンガ大好きで全巻そろえてたんですよ♪
なんだか無性に読みたくなってきてしまいました。まさか、あのキャラと入江くんが重なる日がくるなんてww

>紀子ママ様 

>紀子ママ様

知らなかった、医学部ならぬ胃学部だったのですね(笑)!
琴子ちゃんの愛情たっぷりな破壊力抜群の料理を食べても大丈夫なんだから、入江くんの胃袋は確かに研究の余地がありそうです♪

琴子ちゃんからすると、例え西垣先生を睨んでる入江くんでも「ちょっと怖い目をしてる」程度で、普段の目つきの悪さも「切れ長でステキ」なんだと思います(笑)
可愛いですよね、琴子ちゃん♪
恐らく他に人がいれば(特に、ガッキーや裕樹くん)「涼しげ…?」と首を傾げたことでしょう。なんせ二人は、涼しい気分にさせられることが多いですから。

こちらこそ、新たな学部ネタ、ありがとうございました♪

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>hitomi様 

>hitomi様

うる☆ですね!それも全巻持ってます♪と言っても、愛蔵版ですが……アホのあたる(酷)を一生懸命好きなラムちゃんが可愛くて可愛くて!
そういえば、二人ともツンデレ……(笑)

乱馬くんの台詞は、まさに入江くんの気持ちだと思います。だから完食しちゃうんですよね!
どんなにまずくても、横からガッキーとかが「どれ、僕にも一口」なんて言おうもんなら足蹴り入ると思います(笑)hitomi様の意見に同意です(^m^)フフッ

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>吉キチ様 

>吉キチ様

く、黒直樹(笑)!
そうなんですよ、黒直樹も二人っきりで…琴子がいつも通り可愛ければ、ドSにならずに済むこともあるのです♪なんて(笑)

食後のデザート、彼にとっては間違いなくデザートになると思いますが、琴子ちゃんにとっては…ねぇ?
自らが甘味ですもんね。「あたしにとってはちっがーう!」という叫びが聞こえてきそうです(^m^)
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