*初恋*

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
 夏的恋愛二十題-15 night ver.- 夏的恋愛二十題-17・前-
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ   3kaku_s_L.png   スポンサー広告
*Edit   

「お題」
夏的恋愛二十題

夏的恋愛二十題-16-

 
 夏的恋愛二十題-15 night ver.- 夏的恋愛二十題-17・前-
16.蚊ネタ







 
 ブ~~ン……


 耳障りな音がする。
 夕食後、何となくリビングで本を読んだりテレビを見たりしていた琴子と裕樹は、思わず顔を見合わせた。
 この二人、実の姉弟でもないくせに、過ごす時間が長いからか仲が良い。
 今も揃って両手を構えると、羽音だけで姿を見せない蚊を探して立ち上がった。

「裕樹くんはそっち、あたしはこっちね」
「わかった」

 リビングの奥を裕樹に任せ、琴子はリビングの入り口からキッチンに向かってを睨むように見つめる。
 黒い小さな点、その移動を見逃してはならない。
 
「いた!」

 裕樹がそう言うと、直後にパンッ!という音がした。
 だが残念なことに逃したらしい。すぐに舌打ちも聞こえてくる。

「琴子、そっち行ったぞ!」
「わかった!」

 琴子はぐるっとリビングを見回した。白い壁に黒い点があればすぐに見つかりそうなものなのに、こういう時に限って全く見つけられない。
 と思った矢先、琴子は壁ではなく、裕樹の肩に蚊がいることに気が付いた。

「見つけたぁ~!!」
「痛ぇっ」

 バシッという音を立てて琴子が思いっきり裕樹の肩を叩く。
 だが、敵もさるもの。鈍い琴子のそんな動きで掴まるような間抜けではないらしい。
 琴子を馬鹿にするかのように、反対側の裕樹の肩へと移動する。

「っも~!何よ!」

 琴子は蚊の移動した方を叩いた。だが、それも逃してしまう。

「裕樹くん動かないでよっ」
「なんだよ、どうすれば――…」
「じっとしてて!」

 琴子はそう言うと、裕樹の周囲をぶんぶん飛び回る蚊を睨んだ。
 若い女の血よりも、子供とはいえ男の血を好むなんてきっとメスに違いない、そんなことを思う。(産卵のためなのだから、メスで当然なのだが。)
 だから琴子を馬鹿にするのだ。
 …自分で「蚊にすら馬鹿にされる女」と言っているようなものなのだが、今の琴子は気づいていない。
 琴子は裕樹の額にとまった蚊を見ると、獲物を狙う猫のように構えた。
 そして。

「覚悟ぉ~~!!」

 裕樹を押し倒すようにして飛びかかり、ベシンッ!と手のひらを振り落す。
 押し倒された挙句に盛大に額を叩かれた裕樹が、ぐえ!痛い!!と騒いだ。
 しかも。

「ああ、逃げられた~!!」

 …叩かれ損である。
 
「最悪だ、この鈍チン琴子…」

 やれやれ、と半身を起こした裕樹は、琴子に一言文句を言ってやろうと視線を向け―――げ、と呻いた。
 
「…お前ら何してるんだ?」
「おおおおおお、お兄ちゃんっっ!!」

 噛みすぎだ。
 裕樹はざっと血の気を失うと、カチンコチンに固まってしまった。
 寝転がる裕樹に跨る琴子。こうなった原因はきちんと胸を張って説明できるけれど、そんなことで目の前の閻魔大王のようになっている直樹が納得してくれるとは思えない。
 夜勤から帰宅した直樹は、足元に荷物を置いて腕を組み、リビングの入り口で仁王立ちしていた。
 裕樹はその背後に、メラメラと燃える怒りの炎を見た気がした。
 しかし、ここですごいのは琴子だ。
 裕樹を固まらせるほどの直樹の覇気など物ともせず、相変わらず猫のように蚊を追いかけている。
 そして。

「入江くん、動かないで!」

 ぶ~~~ん……。
 蚊が直樹の体にとまる。
 大事な大事な彼の、大事な大事なところに。
 
「今度こそっっ!!」

 琴子はそこがどこかを考える余裕もなく、ただ目の捉える蚊を退治したい一心で、思いっきり手を振り下ろしたのだった―――。









「ふぇ~~~ん、入江くんごめんなさい~~!!」

 さすがの直樹も、そこへの攻撃に対して鍛えることはできない。
 声もなく座り込み、ダンゴ虫のように体を丸める。

こ、とこ……てめぇ……っ

 息も絶え絶えに琴子を睨む直樹を、裕樹はごくっと喉を鳴らして見つめた。
 同じ男として同情したい気持ちもあるが、この状態の兄でも恐ろしく見える。琴子はそんな直樹に縋りつき、おいおいと泣いていた。
 わざとではないにせよ、直樹のそんなところを叩いてしまったこともショックだし、直樹に痛い思いをさせてしまったのもショックらしい。

「ごめんね、ごめんね!?」

 そう言いながら直樹のそこを宥めるように「いい子いい子」といている琴子に、裕樹は思わず視線を逸らした。
 琴子は純粋に痛みを紛らわせるつもりでしていて、たまたま場所がソコだというだけなんだとわかっていても、裕樹とて若い男子。それだけには見えなかったりも…する。
 これ以上ここにいて、直樹の怒りのとばっちりを受けるのはご免だ。
 ただでさえ、自分だって琴子にあちこち叩かれているのだから。
 裕樹は素早く立ち上がると、こそこそと二人から離れる。そうしてダイニング側の出口から廊下に出た。リビングからは、まだ琴子の慌てふためいた声がしている。
 でも、きっとあれもすぐ止むだろう。
 あの兄があのくらいでへこたれるわけはないし、あんな無礼を働かれてすんなりと許すはずもないからだ。
 
「入江くん、ごめんなさい。ね、許してくれる?」

 階段を上りかけた裕樹の耳に、琴子の情けない声が聞こえてくる。
 直樹の声は聞こえてこないけれど、琴子はそのうち言いくるめられて、寝室へと連れ去られるはずだ。
 その前に部屋に避難して、はからずも琴子とじゃれ合うように見えてしまったことを忘れてもらわなくてはならない。
 裕樹はすたこらさっさと部屋に入ると、がちゃっと鍵を閉めた。
 
(僕はこれから貝になる、貝になる…)

 それとも、日光東照宮の三猿だろうか。
 防音が施されているとはいえ、そこはそれ、壁一枚隔てたところで…と思うと何とも微妙な気持ちになる繊細な高校生男子には、どちらにしても必須の心構えである。
 ほどなくして、連行される琴子と、連行する直樹の声が聞こえてきた。

「わざとじゃないの、許してよ~~~」
「機能に問題がなかったら許してやるって言ってるだろ」

 どうやら、機能チェックをするらしい。
 裕樹はイヤホンを耳に突っ込んだ。音楽を聞きながら、最近読み進めている推理小説を読み終えてしまえばいい。

(見ざる言わざる聞かざる……僕は貝になる、貝になれ僕!)

 裕樹はその暗示に夢中になるあまり、ハードカバーのその本をごとっと足の小指の上に背表紙から落としてしまった。
 思わず声をあげそうになるのを何とか堪え、裕樹は涙目で口を抑える。
 ここで自分が声を上げて、それに気づいた琴子が抵抗して直樹の「機能チェック」を邪魔した日には、どんな無理難題をつきつけられるかわかったものではない。
 存在も消し去らねばならないのだ。
 裕樹はじんじんと痛む足の上から本を拾うと、へっぴり腰でベッドに寝転がった。
 後はもう、暗示通り“貝になる”だけ―――。




 余談だが、翌朝の朝食時になっても琴子が下りてこなかった(こられなかった?)のを知って、自分の判断が正しかったと胸を撫で下ろした裕樹なのであった。



END





琴子ちゃんに無理ばっか突き付けてるから、天罰下ったんじゃね?と思ったり思わなかったり(笑)。
叩かれていつもより腫れて質量3割増しとかだったら、琴子ちゃん不憫すぎますねぇ……(今日が蒸し暑くて、脳内に虫がわいたようです)

お題配布元:TOY様

関連記事

総もくじ 3kaku_s_L.png 【お題】
もくじ   3kaku_s_L.png   夏的恋愛二十題
*Edit ▽CO[22]   

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

裕 

楽しいお話をありがとうございます!
笑っちゃいました~。
それにしても、裕樹の災難は続くよ、どこまでも!ですね笑。琴子に叩かれ損の挙げ句、好きな本にまで裏切られるとは・・・イヤホンまで付けて、気を遣ってるってのにね笑。琴子への制裁は滞りなくイタされたようで笑
結局、一番得する入江くんなのですね笑。
次作のお話も楽しみにしています。

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 

お久しぶりです
いつも楽しくニヤニヤと読ませてもらってます!miyacoさんの書き上げるスピードの速さとお話の面白さに いつも尊敬しています!今回も裕樹が犠牲になっちゃいましたね。二人の部屋の隣って気の毒過ぎです
高校男子は鼻血ものの刺激と思われます!機能の確認 朝まで頑張ったんでしょうね。閻魔様の炎は鎮められたんでしょうか?ナイトバージョンも楽しみになっちゃいます!

>ちぃ様 

>ちぃ様

15で無茶を強いられた腹いせですね、きっと(笑)
私もどれだけ痛いのかわかりませんが、あの天才と野獣の名を欲しいままにしている入江くんが悶絶するくらいですから、相当なものなんだと思われます(^^;でもそうそう、きっと琴子ちゃんが体を張って(張らされて?)癒してくれると思います。天才だから、が何にでも適用される気がしてしまうの、わかります~!
出た、入江クオリティ!と思いながら、確かに低下しそうもないな…と納得(^m^)プッ

夏のお題、残る数話を頑張って仕上げていきますので、よろしくお願いいたします♪

>おかき様 

>おかき様

こちらこそ、いつも見ていただきありがとうございます!連続でアップしたらくどいかな、と思っていたのですが、そう言っていただけてよかったです(^^)

裕樹くんも、まさか蚊ごときが自分の命を脅かすとは思っていなかったと思います(笑)
そして好美ちゃんは、まさか裕樹くんがそんな風に体を張って様々なことを体得しているとは思いもしないことでしょう~。ママがほくそ笑んで(微笑んでじゃないところがいいですよね♪)イリちゃん、アイちゃん達が照れて見守る……入江家の明るい幸せが詰まってる表現で、コメを拝見して嬉しくなってしまいました(^^)

>narack様 

>narack様

そ、そこまで!?
ありがとうございます~!

narack様の予測通り、見事に罰が当たった入江くん(笑)悶絶です…天才でも痛いもんは痛いよね、ということで♪
以前前をよく見ないで歩いていて、自転車の通行防止に建てられていた鉄の杭に股間を強打したことがあるのですが、あれと同じくらい痛いのかな?(なにしてんだお前、というツッコミが入りますね。ええ)
ここでも馬之介が活躍するんですか!?おおお~~、さすが入江くんっ!
家康に弟子入りした裕樹くんの心の叫びに、妙に胸を打たれました…不憫だ、裕樹くん…(涙)

3割増しでシャア…旦那がガンダム好きなのでちょっとわかるんですが、シャアって3倍速いんですって。
ってことは、3倍速く復活するとか!?こ、琴子ちゃん逃げてー!!ニュータイプが襲ってくるわ!!…なんて(笑)

>しょこら様 

>しょこら様

簡潔な文章に、しょこら様の苦笑が見えた気がします(笑)
良かったんですよ、多分……入江くん的には(^m^)フフッ

>REE様 

>REE様

災難は続く…確かに(笑)!野を越え山を越え、谷越えて……はるかな裕樹くんの部屋までも届く兄の怒り。
裕樹くん、社会人になったら「僕もお兄ちゃんみたいに自立を経験すべきだと思うんだ」とか抜かして、入江家を出ていきそうですよねぇ。もちろん、兄夫婦のイヤンな夜から逃げるために(笑)

自作は…って、あ!えろでした!すっかり忘れてた(笑)
よろしければお付き合いくださいませ♪

>まぁに様 

>まぁに様

初めまして!このような辺境の地までいらしてくださり、ありがとうとございます♪
今回の被害者は裕樹くんで……苦労人ですよね、彼も(^^;
そして、私の書くえろはどうも笑いが起こるらしく(笑)なんでだろう~~?と思いつつ、男性向けのえろを書いているわけじゃないから、まぁいっか?と思っております(^^)viva!エロの頼もしいお言葉に励まされました♪ありがとうございます!
次作は書いた自分でも忘れていた、えろ前後編(再び…)なので、よろしければ是非お付き合いくださいませ。
こちらこそ、これからもよろしくお願い致します!

※次回募集の際の応募、心からお待ちしております(^^)

>k様 

>k様

私もスマホ使用なのですが、スマホ表示で自ブログを見たことがなくってk様のご指摘を受けて、今初めて見てみました。確かにカテゴリは出てこないですね。ええと、以前はカテゴリ選択があったのでしょうか?以前も今も、表示が変わるような設定は何一つしてないんです…(汗)。
通常のインターネット表示(と言う表現が正しいかわかりませんが)ができるようでしたら、画面のどこかに【PC】という表示があると思いますので、それをタップしていただくと、PC用のテンプレで表示されると思います。それでしたらカテゴリも出てくると思うのですが…。
そうでなくスマホ画面でカテゴリが、となると、ごめんなさい。携帯各社の仕様の問題なのか、FC2による強制的な表示の問題なのかになってきてしまうので、私の方ではわかりかねます。お力になれず申し訳ありません(><)

>さくら子様 

>さくら子様

こんばんは♪お忙しい中ありがとうございます、なのです!(あれ、日本語おかしいぞ)
今回も裕樹くんが犠牲に……せめて廊下を挟んで向かいの部屋ならよかったでしょうに、隣だったために、裕樹くんはかなり辛~い状況に置かれているようです(^^;

きっと琴子ちゃんは一晩で許してもらえたと思いますが、裕樹くんは…朝、やたらと苦い珈琲とか飲まされていると思います。

直樹「今日は俺が入れてやるよ」
裕樹「え、お兄ちゃんが?」

→苦くて泣きそうなくらいのコーヒーを渡される

直樹「うまいか?」
裕樹「……」
直樹「琴子が触れて甘かっただろうから苦めにしておいたんだが」
裕樹「!!」
直樹「青汁がよかったか?」

…みたいな感じで(笑)恐ろしやお兄様!

>むさぴょん様 

>むさぴょん様

あはは、そう言っていただけると嬉しいです♪
入江家のあるかもしれない夏の一日を妄想したら、前回の入江くんの暴走から「おしおきだべぇ~」の一言が浮かんでしまって、あんなことに(^^;
琴子ちゃんはほどほどで許してもらえたと思うのですが、可哀想なのは裕樹くんですよね。
誤解な上に、きっと彼にもお仕置きという名の報復があるでしょうから(笑)
頑張れ裕樹くん、琴子ちゃん!とむさぴょん様と一緒に応援したいと思います♪

>紀子ママ様 

>紀子ママ様

私もあの音が聞こえてくるとイラッとします。特に枕元で聞こえてきた時とか最悪ですよね(--;
嫉妬深い兄はともかく、鈍感な姉っていうのがいいですよね。可愛いな、琴子ちゃん♪
彼のモットーが百倍返し……ハンムラビ法典もびっくりじゃないですか(笑)!でも何故か違和感がない。さすが入江くんですね(^m^)フフッ

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

>ぴくもん様 

>ぴくもん様

いつも兄夫婦の(というより、主に兄の)とばっちりを受ける裕樹くんですので、私も彼には同情しますが入江くんにはザマーミロでした(笑)。
ピュアで下心のない琴子ちゃんは、何の意図もなく「いいこいいこ」なわけですが、そこはちっとも「いいこ」じゃないわけで(^^;裕樹くん、本当にお疲れ様、ですよねぇ。

たとえ蜂にさされても、という行で吹きました(^m^)ププッ
すっごい説得力です~!!

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

>吉キチ様 

>吉キチ様

あの「ぶ~ん」は腹が立ちますから(笑)きっと琴子ちゃんも必死で、黒い小さな影を追っていたのだと思います。ついでに悪さばっかりするムスコさんも成敗!?

言われてみたら、確かに裕樹くんはあちこちでガチガチ…夏なのに(笑)ふ、不憫すぎますね…!
それに比べて入江くんときたら、これ幸いと琴子ちゃんと機能チェック。
伏せられた×の多さにときめいてしまいました♪ふふ、ふふふふ……!(←怪しい)
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
  • 【夏的恋愛二十題-15 night ver.-】へ
  • 【夏的恋愛二十題-17・前-】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。