*初恋*

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 夏的恋愛二十題-12・5- 夏的恋愛二十題-14-
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「お題」
夏的恋愛二十題

夏的恋愛二十題-13-

 
 夏的恋愛二十題-12・5- 夏的恋愛二十題-14-
13.二人で花火もオツなもの

前回更新分とはガラッと変わります(笑)









 毎年恒例となりつつある、琴子のおねだりタイムがある日の入江家リビングで繰り広げられていた。

「お願い、神様俺様入江様!」
「……聞き飽きた、それ」

 最近では、琴子の懇願に対する直樹の態度も一層素っ気ない。
 新聞をめくるペースも変わらないし、視線が揺らぐこともなく。だが、もちろん琴子は諦めない。
 相変わらず兄夫婦の漫才のようなその光景を目にしていた裕樹が、呆れたように口を開いた。

「今度は一体何なんだよ」
「よくぞ聞いてくれました!」

 きゃあ!と琴子が喜ぶ。ぎろっと直樹に睨まれた裕樹が、蛇に睨まれたカエルのように体を縮めた。
 だが、琴子は気づかずに手をぱん!と叩き、満面の笑顔で妄想を語りはじめる。

「あのね、花火大会があるの!その日はあたしも入江くんもお休みなのよ!忙しいあたし達の休みが重なるなんて、これはもう神様が二人で見に行きなさいって言ってるんだと思うの!」

 もちろん、偶然である。
 直樹は馬鹿か、と思いながら新聞をまた捲った。

「夜空に綺麗な花火が上がるでしょ。あたしと入江くんは浴衣でそれを見てるの。それで、あたしが綺麗ね入江くんって言ったら、入江くんが、琴子の方が綺麗だよって」
「……言うわけねーだろ」
「いじわるっ」

 うわーん、と琴子が大げさに泣いて見せる。
 そして、直樹の読んでいた新聞を取り上げると、どん!とその膝の上に座った。直樹の体をがくがくと揺すり、琴子がお願いお願いと繰り返す。

「二人で花火なんて見たことないでしょ!?一生の思い出になるよ、行きたいよ~!」
「庭で線香花火でいいだろ」
「それもいいけど、大きい花火を入江くんと見たいの!」

 琴子のなすがまま揺さぶられていた直樹が、ついにゴンッ!と琴子の頭に拳骨を落とす。
 いい加減にしろ、ということらしい。
 結局そのまま返事をもらえず、琴子はその晩、酷く不貞腐れて眠りについたのだった。





 そして、花火大会当日。





 ジメジメと夏の夜空を見上げていた琴子は、遠くでこれから開催される花火大会を思ってさらにどんよりしていた。
 またしても、リアルで「の」の字を書いている。
 
「ふんだ…入江くんの意地悪。そんな難しいこと言ってるわけじゃないのに」

 文句を垂れるのは忘れない。
 目の前で裕樹が浴衣を着て、好美と出かけるからと言って出ていくのを見ていただけに、直樹への恨みはいや増しているらしい。同じ兄弟なのにどうして、とは、琴子でなくても思うところだろう。
 尊敬しつつも反面教師にされているからなのだが、今の琴子が知ることではない。
 
「可哀想な琴子ちゃん。血も涙もないような冷血人間を夫にしたせいで」
「それが息子だろ」
「本当に誰に似たんだか」

 紀子の嫌味を聞き流し、直樹はアイスコーヒーを飲み干した。

「わざわざ大汗掻いて浴衣着て、うんざりするような人混みで見る奴の気がしれないね」
「夏の風物詩でしょーっ」

 琴子が半べそで振り返る。直樹はため息をついた。
 顔を真っ赤にして鼻水を垂れて――百年の恋も冷める、とはこういうことを言うのではなかろうか。
 これから日が沈みゆく夕刻の街並みを窓から臨み、直樹はどうしたものか、と思う。せっかくの休みを、このキノコ琴子と過ごすのは勘弁してもらいたい。
 直樹がそんなことを考えていると、家の電話が静かに鳴った。紀子がすぐさま受話器を取る。

「あら、パパ……ええ、あら、そうなの?わかりました、すぐ支度するわ」
「どうしたんだ?」
「急な接待ですって。先方が奥様を連れてくるって言うから、私も行かないといけなくなったわ」

 紀子はそう言うと、パタパタとリビングから出て行った。
 なるほど、これで図らずも二人きりである。

「お兄ちゃん、琴子ちゃんをそれ以上苛めちゃだめよ。お夕飯は適当にしてちょうだいね」

 そう言い残して紀子が慌ただしく出かけていくと、直樹はようやく腰を上げた。
 二人きり、家人がいないのなら―――甘い顔を見せてもいい。

「琴子」
「…なに……きゃあっ」

 直樹は琴子を抱き上げた。
 
「今から出かける気はないけど。庭でなら、付き合ってやるよ」
「……ほんと?」
「大きい花火じゃなくていいならな」
「それも捨てがたいけど……今からじゃ無理だから、今年はお庭でいい」

 どうやらまだ諦めていないのがわかり、直樹はぷっと吹き出した。琴子の、こういう正直なところは可愛いと思う。
 直樹はぽんっと琴子の頭を撫でると、紀子が買っておいた(何の目的か知らないが)手持ち花火のパックを持ち出した。





 すっかり暗くなった夜空の下で、直樹は琴子を膝に抱えて花火を楽しんでいた。
 琴子も、直樹がいつになく甘いのでご機嫌が直ったらしく、笑顔を浮かべている。

「あ、これすごい!途中で七色に変わるんだって!」

 直樹がカップに入った蝋燭を差し出すと、琴子が嬉しそうに点火する。綺麗に敷き詰められた白いタイルの上で、琴子の持った花火が七色の光を発していた。
 徐々に色の変わる花火の光を受けて、琴子の白い肌の色味も変わって見える。
 家の中の電気を消してしまったせいもあって、それはそれは柔らかく、神秘的なものに見えた。
 直樹は吸い寄せられるようにその肌に唇を押し当て、琴子をしっかりと抱え込む。

「家で花火もいいもんだろ?」
「ん。二人ならね」

 さすがの琴子も、直樹のこの甘さが二人きりだからこそのものである、ということは理解しているようだ。
 ふっと光を失って力尽きた花火をバケツに突っ込むと、琴子はくるっと背後の直樹を振り返った。

「でも、来年は連れてって」
「…嫌だ」
「いいじゃない、約束しようよ」
「無理」
 
 実際、仕事がどうなるかわからないから、約束なんてできないんだよな。
 俺は出来ない約束はしたくない。それは常に琴子の気持ちに誠実でありたいという、俺なりのプライドだ。
 ま、そんなこと琴子が察することもないんだろうけど。
 案の定、琴子はぷぅっと頬を膨らませている。

「わかんないでしょ。来年だって、お休み合うかもしれないよ」
「合うかもっていうか、お前が合わせるんだろ?」
「へへっ、そうかも」

 男湯に突撃してスッ転んで心配させて、結局俺と同室になって。
 そんな風な無茶はもうゴメンだけど、俺はその琴子の笑みを見て、少なからず琴子の起こすハプニングを嫌っていないと改めて思った。
 琴子は俺の横に立って、また新しい花火に火をつけている。
 弾ける火花と、同じくらい輝く琴子の笑顔。
 ったく、こいつのこの笑顔には弱いんだよな。
 
「無茶すんなよ、奥さん」
「うんっ」

 再び力尽きた花火をバケツに突っ込んだ琴子を抱き寄せ、俺たちは深いキスをした。
 仕方ないから、来年は付き合ってやるよ。
 お前の頑張り次第だけどな。




END







やっぱり入江くんの「奥さん」呼び好きだなぁ…♪

お題配布元:TOY様
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>narack様 

>narack様

人がいるからダメだ、というのもあるかと思いまして(笑)
人前で抱擁はアリ(例:嫉妬騒動)なのに、甘い顔を見せる(例:日常)のは×ってよくわからないツンデレですよねぇ。アメムチって、これも相当するんでしょうか(^^;?
どうも私の書く琴子ちゃんは子供のようで、毎回「なぜこうなる…?」と首を傾げております(笑)
でも、可愛いって言っていただけてホッとしました♪

それから大事なお返事を!
そんなものは1つもありませんでしたよ~。ステキでしたというお声はありましたが(^^)
でももし何かあっても私が決めたことですし、narack様にご迷惑がかかるようなことになるようにはしません。イラストを頂いただけでもありがたいのに、アップ後まで配慮くださってありがとうございました!

そしてドMも頂戴できるなんて……こ、心待ちにしております!(図々しくも)
野獣度アップなんて……てぃ、ティッシュ用意しておきますね。鼻血用に(^m^)フフッ

>むさぴょん様 

>むさぴょん様

え、これが天然!?
琴子ちゃんの天然と違い、なんて腹黒く可愛げのない…(笑)
でもありえるかも、と思ってしまいました(^m^)
天然小悪魔な奥さんと、天然でドSな旦那様。お似合いですよね♪

>匿名様 

>匿名様(08/29 02:15)

ですよね、ですよねっっ!!
ちょっとイタズラっぽく「奥さん」なんて言われた日にゃあ……顔の筋肉崩壊です(笑)
同意してくださる方がいらして、とっても嬉しかったです~!

>紀子ママ様 

>紀子ママ様

そうなんですよね。入江くんがそこで素直に「仕方ないなあ」なんて言って出かけるはずがない!結婚しようと、いかに琴子を想っていようと、だからこそ入江直樹なのかなって気がするんです(笑)
あっちの入江くんはへたれ街道まっしぐらですもんね(^^;すいません~!
ぜひぜひ、ここで一息ついていってくださいませ♪ティッシュ、ローションティッシュ用意しました~!!

裕樹くんは尊敬するお兄ちゃんを見て来て、ここは真似できないって部分があると思っていて。それがこのツンデレっぷり。いや、彼も多分その要素は持ってると思うんですが、全然生ぬるくって可愛いものって印象があるんですよ~。好美ちゃんは反面教師(?)となってくれた入江の若夫妻に感謝しなくっちゃ、ですよね(笑)

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>ひろりん様 

>ひろりん様

夏休みが終わってしまって、夏も終わってしまう~!!…と、大慌てなのです(笑)
二学期は行事も多いし、まだ本格始動でない今のうちでないと更新も難しくなってしまうので(><)

ひろりん様のコメを読んでいて、うんうんと何度も頷いてしまいました。新婚さんのうちくらいは二人きりで、というのは思いますよね。入江くんが諦めてるというか、同居を選択している理由に思わず笑ってしまいました。いかにも「らしい」んですもん!少なくとも神戸に行ってる時は、同居でよかった~って思ってそうですよね。啓太の例もあるし、自分がいない間に琴子ちゃんに悪い虫が寄ってくる可能性は大ですもん(笑)琴子ちゃんはいつも逆を心配してますが…入江くんだって心配だと思うから。

台風の足が遅くて、気分がどよーん…私、雨が降ると頭痛くなっちゃうんです(--;
これでディ○ニーはかなりの苦行!でも諦める気のないサルが一匹!!何とか耐えて、イリコトで癒されたいと思います~…あんまり弱音とか書きたくないんですが、なんだかひろりん様に甘えたくなってしまいました。すいません!

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>吉キチ様 

>吉キチ様

膝の上に大事な琴子ちゃんを抱えて、鼻も伸びますがムスコさんも伸びます(←最低)。

直樹の花火はわかりにくいですが、確かに存在するんですよね。頂いたコメを見て、そうそう!と頷いてしまいました(^^)優しさの欠片も見せない、というところに一番同意しやすかったのがまた、妙に切ないところかもしれませんが(笑)

甘い二人の雰囲気を感じていただけてよかったです♪
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