*初恋*

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 イジワルで10のお題 素直じゃない男 -後-
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「二次創作」
前後編

素直じゃない男 -前-

 
 イジワルで10のお題 素直じゃない男 -後-
前編です。

ありがちと言えばありがちかも…(汗)。
あんまり引きずらず、さっくり前後編でお送りしたいと思います。

※オリキャラが出ます。それほど設定細かくしてませんが、オリキャラが苦手な方はご注意を。







素直じゃない男 -前-





「あ、来た来た!琴子ォ~、アンタも見てみなさいよ!」

 幹に呼ばれ、琴子はナースステーションからひょっこり顔を出した。
 この斗南病院において、そんな扱いを受ける医師は限られている=直樹が来たか?とでも思ったが、いつもなら働く『入江くんセンサー(けっこう優秀)』がウンともスンとも言っていない。
 首を傾げる琴子は、ほら、と幹に腕を引っ張られて一緒になって廊下に出た。
 同僚がきゃあきゃあと黄色い声を上げる先には、直樹ではなく見慣れぬ青年医師がいる。
 
「神戸から来たんですって。素敵よねぇ~」

 ウットリとする幹を横目に、琴子は冷静だ。
 彼女のトップには、常に直樹がいる。確かにあの青年医師は一般的に見てカッコイイ部類に入るとは思うけれど、それだけだった。
 冷静な琴子を見て、真里奈と幹は肩を竦める。

「相変わらず、アンタは入江先生命ねぇ」
「ホント。ま、ライバルが減るのはいーけど~」
「あら真里奈、船津先生はいいの?」
「は!?なんか言った!?」

 いつものやり取りが始まったのを見て、琴子はナースステーションに戻った。
 直樹が神戸に研修に行ったように、この病院にああして他病院から医師が来ることは珍しいことではない。
 きっと研修か何かだろうし、黙っていても、婦長から紹介があるだろう。
 そんなことより大事なのは、目の前に広がるカルテの山だ。休憩時間からずっと取り掛かっているのに、何が悪いのかちっとも終わりを見せない。

「ってゆーか、みんな静かにしてよぉ!コレ終わらないとあたし帰れないんだってば!」

 ファイルを片手に叫び、琴子は再び必死でペンを走らせるのだった。







 
 入江琴子さん?
 そう呼ばれて、琴子は足を止めた。振り返ると、随分高い位置にある顔がにこにこと琴子を見下ろしている。

(入江くんと同じくらい?)

 そんなことを思いながら、琴子はなんですか?と返事をした。
 目の前にいるのは、先ほど婦長から紹介された医師、高倉だった。

「神戸では、ご主人の入江先生にお世話になったんです。こちらに奥様がいらっしゃると聞いて、ご挨拶しておかなくてはと思って」
「そうなんですか!」

 直樹が絡むと、途端に琴子のガードは甘くなる。
 それまで至って普通の対応だったのに、満面の笑顔を浮かべて高倉に向き合っていた。
 直樹が神戸に行ってしまっていた時は辛かったけれど、再会した時の喜びは極上のもので、だから、神戸という場所にあまり悪い印象もない。琴子の中で、高倉→神戸→入江→お世話になった、という式が出来上がる。
 その場は挨拶だけで終わったが、元々人に優しい琴子のこと。
 高倉の醸し出す人懐っこい雰囲気もあって、相変わらずミーハーに騒ぐ同僚達に相槌を打つ程度になっていた。





         ********





「高倉先生って、入江先生と同じ外科なんですってね」
「へぇ~」
「あら、じゃあ今度からダブルで見られるってこと?」
「や~ん、目の保養~♪」

 休憩時間に聞こえてきた言葉に、琴子は隣に座る直樹を見た。
 目で「そうなの?」と聞く。直樹が小さく頷いた。

「入江くんから見て、どんな先生?」
「良い先生だよ。腕も悪くない。ちょっと自信家だけどな」
「…それ、入江くんが言う?」
「なんか言ったか?」
「……いえ…」

 ぎろっと睨まれ、琴子は慌ててカツ丼を掻っ込んだ。
 
「そうそう、高倉先生、あたしのところにまで声かけてくれたんだよ。入江くんにお世話になりましたって」
「……お前に?わざわざ?」

 直樹がその秀麗な眉を顰める。
 何か思うところでもあるのか、口元に手を当てて考え込む素振りを見せた。
 琴子はそれには気づかず、残ったご飯粒を丁寧に口に運んでいる。そしてどんぶりが空になると、勢いよく立ち上がった。
 今日は午後から手術に入る。まだまだ一人前とは言い難いことは誰よりわかっている琴子は、事前に何度も確認しなくては自分が安心できない。
 だから今日も、休憩もそこそこ、主任達に確認しながらオペの望むつもりでいた。

「それじゃね、入江くん」
「…ああ」

 時間がない~!と騒がしく去っていく琴子の後姿を、直樹は何か言いたげに見送る。
 声をかけようか、かけまいか。
 迷って迷って、立ち上がりかけた時、ふいに肩を叩かれた。

「……高倉先生」
「ご一緒しても?」

 直樹が答える前に、高倉は直樹の前に腰掛けている。否やも何もない態度だが、直樹はクールな表情を崩すことなく彼を見ていた。
 
「琴子さんにお会いしましたよ」
「ええ、今聞きました」
「噂はかねがね聞いていましたけど、確かに可愛らしい方ですね。入江先生の掌中の薔薇というところですか?」
「………」

 僅かに直樹の目が細められたことには気づかず、高倉は箸を勧めている。
 自分ですら琴子を花に例えたりしないのに、自分でない男がペラペラと琴子を評するのが気に入らない。
 何だか嫌な予感がした。そう、鴨狩が初めて琴子の前に立ったときのような…自分の中で、あまり歓迎したくない感情を引き出される予感だ。
 もういい加減折り合いをつけるやり方は身に着けたつもりだけれど、不快感だけはどうしようもなかった。
 高倉はまだ琴子を褒めている。

「琴子さんと一緒に働けるだけでも、斗南に来た価値はありますよ」

 くっきりと、直樹の眉間に皺が刻まれた。






     *********






 
 高倉がやって来てから、ナースステーションには花が咲いたようだった。
 理由は簡単。彼のリップサービスの良さだ。
 西垣も舌を巻くほどなのだから、なかなかのものだろう。
 基本的に直樹は興味のない交流の仕方だが、その花の中に琴子がいるとなれば話は別だ。
 休憩の時の高倉の言葉もあり、直樹は相変わらずのポーカーフェイスを少しばかり不愉快そうに歪めてナースステーションを覗き込んだ。

「あの人は…」
 
 思わず、呆れたような直樹のため息が洩れる。
 ナースステーションには、ナースに囲まれてさらに饒舌になっている高倉がいた。
 どうやら、ここ斗南大学病院でも高倉のこの様子は珍しいものではなくなっているようだ。
 ベースである神戸の病院を離れて羽を伸ばしている、というわけでもないのは、かつて神戸で共に働いたことのある直樹にはよく知る事実である。
 直樹はナースステーションの入り口に立つと、何も言わずに琴子の後ろに立った。
 
「入江くん!」

 それに気づいた琴子がぱっと背後を振り返り、満面の笑顔で直樹を見上げる。
 あのね、あのね…と、いつものように一生懸命話かける琴子を、直樹は怪訝そうに見下ろした。
 病院のナースステーションで、そんな笑い転げるような話がいくつも転がっているはずがない。まして、琴子が自分に話して聞かせようとするほど楽しい話題など検討もつかなかった。
 常日頃からどうでもいい話題を振ってくる琴子ではあるが、病院では一応控えている様子だからだ。

「今ね、高倉先生が神戸のお話してくださってたの。入江くんがどんな風に過ごしてたのか~とか」
「別に、どーでもいいだろ」
「よくないよ。あたし、入江くんのことたくさん知ってたいもん!」

 むぅ、と膨れる琴子に対し、相変わらず直樹はさらりとしている。
 むしろ高倉の方が琴子にまとわりつき、馴れ馴れしく肩を抱いてきた。それをすっと半眼で見る直樹と、あからさまに払いのける琴子の様子に、残っていた看護師達が呆れている。
 彼らにとって、直樹というのは『琴子の旦那』であり、『落とせたらラッキー』ではあるけれど『絶対無理な物件』であることはしっかりインプットされている。
 けれど、神戸から来て日も浅い高倉は知らない…のかもしれない。当然と言えば当然なのだが、教えなくても見てればわかりそうなものである。
 けっこう鈍いんだな、と彼らは高倉を見ていた。
 その高倉は、それまでの笑顔とナンパな色をふいに仕舞い、そうだ、と呟いた。
 これは、彼が仕事モードになった時の反応である。それを知っている直樹も、つられるように顔を引き締めた。

「305号室の山岡さん。入江先生に相談したかったんですよ」
「…わかりました」

 そういう大事なことは、もっと早く言えよ。
 直樹の心の声が聞こえた気がした琴子だった。





    *********





 何が楽しいのか、高倉が琴子にかまう姿が見られるようになって久しくなった頃。
 つまり、直樹の不機嫌な日がいい加減増えてきた頃でもあるわけだが、琴子は高倉に食事に誘われていた。
 
「君と入江先生のコンビ、本当に素敵でしょう?今後の参考に、色々聞かせてほしいんだよね」

 などと言われてしまっては、嬉しくないはずがない。
 どうしようかと迷った琴子も、この言葉で思わず了承してしまったくらいだ。元々、彼女が直樹の隣に立つ者として認められたがっていることを見抜いているのだとしたら、やはり高倉は侮れない。
 もっとも、琴子はそんな難しいことは考えないので、幹や真里奈、鴨狩と食事に行く延長のつもりでいた。
 本当に何の他意もない……とは言い切れないのは、やはり琴子だからだろうか。

(これでちょっと、入江くんヤキモチ焼いたりしてくれたりして♪)

 帰宅してすぐ、琴子は珍しくまともな時間に帰宅していた直樹にそのことを話した。
 クローゼットにコートを仕舞いながら、さり気なさを装っている。だが、小さな体中からソワソワしたオーラが滲み出ていては、あまり意味はなかった。

「今日ね、高倉先生に食事に誘われたよ」
「へぇ。で?」
「え…」

 わかっていたことだった。
 いつもと同じ冷静な声音は怒っているようでもなく、単に話の続きを促している。
 
(行くなよ!とか言ってくれないんだ…やっぱり)

 帰り道に妄想してきた言葉は案の定返ってこず、琴子は肩を落とした。
 鴨狩のときのようなことを願っているわけではない。
 ただ少しだけ、自分が直樹のものであると主張してほしかっただけだ。
 そうしたら琴子はすぐにでも高倉の誘いを断る電話を入れるし、なんだかんだ言って入江くんもちゃんと自分を好きでいてくれる、と今夜も安心して眠ることができるだろう。
 でもこれでは、いつまで経っても一方通行の恋をしているようで。
 夫婦のはずなのに、と悲しくなってしまう。
 琴子はふにゃりと眉尻を下げ、声のトーンを下げた。

「ううん、別に…それだけ。ねえ、入江くんは、あたしが他の男の人と食事に行っても嫌じゃないの?」

 琴子は嫌だ。もし直樹がそういうことになるのなら、きっとはっきりと嫌だと伝えるだろう。
 けれど。

「お前の交友関係はお前のもんだろ。俺は口出ししないよ」
「…そっか……」
 
 至極冷静な、直樹の声。
 琴子が敏感であれば、そこに潜む僅かな悋気を見逃さなかったかもしれない。
 でも、思ったような反応が得られなかった琴子にそんな余裕はなかった。
 しょんぼりとしてベッドに潜り込んでくる琴子を、直樹は横目で見るのだった。






つづく。
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~ Comment ~

掌中の薔薇 

miyacoさま
いつも素敵なお話を有難うございます。
昨日から読み返しの旅に出ておりまして、こちらで「掌中の薔薇」という表現を高倉先生の発言の中に発見しました。一昨日お尋ね頂いた「掌中の珠」よりずっと以前にmiyacoさまはこちらで既に同類の表現をされているので、やはり元々miyacoさまの語彙の泉に潜んでいた表現ではないかと拝察致します。
にもかかわらず大変ご丁寧に確認コメ頂き、その律義さと、表現者としての姿勢に改めて感服しております。
シリアスもミステリーも、はたまた桃色バカップルも多彩に描かれるmiyacoさまをこれからも応援しています。有難うございました。

>hiromin様 

こんにちは(^^)
そ、そんな……私の方こそ、そこまで考えていただけるなんて、嬉しいやら申し訳ないやらです!
本当にぴったりな言葉で、ああ使いたいな、でもやっぱり確認しなきゃ!と思っただけのことですもの。
でも、そんな風に見ていただけて嬉しいです。こちらこそ、ありがとうございます~!
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