*初恋*

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 夏的恋愛二十題-9・2 夏的恋愛二十題-10・2-
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「お題」
夏的恋愛二十題

夏的恋愛二十題-10-

 
 夏的恋愛二十題-9・2 夏的恋愛二十題-10・2-
10.熱中症の君に膝枕








 猛暑という言葉から酷暑という言葉に変わって久しいその日、俺はいつものようにテニス部に顔を出していた。






「相原ー、何ボサッとしとるかぁ!」

 万年玉拾い、とばかりにコートの隅でボールを拾っている琴子に、須藤さんの檄が飛ぶ。
 それをちらっと視界の隅で捉えた俺は、少し見るだけのつもりだったのに琴子の様子がおかしいことに気付いて足を止めた。
 飲んでいたスポーツドリンクから口を離し、琴子を見つめる。
 なんだか顔色が悪い気がした。それに、あの汗の掻き方、おかしい。
 そういえばあいつ、いつから玉拾いしてるんだ?

「須藤さん、あいつ、いつからああしてるんです?」
「ん?ああ、来たときからだな」

 さも当然のように言うが、休み中の部活は朝からみっちりある。すでに2時間はああして下を向いて、ひたすら玉拾いをしているということだ。
 
「…休憩は?」
「取ってるんじゃないか?」

 つまり、彼は把握していないということだ。俺は思わず顔を顰めた。
 琴子がテニスが下手なのはわかっているし、それでも真面目に活動しているこのテニス部を選んだのはひとえに俺がいるからだとわかっている。そんな琴子が、本格的にテニスをプレイするこの部活で相手が見つからず、練習しようにもまともにできないのも当然と言えば当然だ。
 だが、そこを配慮するのが部長だろう?
 琴子には玉拾いと決めてやらせるのは勝手だが、それならそれで、休憩なんかは見てやるべきだ。
 
「おい、入江?」

 須藤さんが驚いたように俺を見る。だが、俺は気にせずラケットを須藤さんに押し付けた。
 あの顔色、汗の掻き方。絶対におかしい。
 俺は足早に琴子に近づいた。

「琴子!」

 草むらにいた琴子に声をかけると、琴子がふっと顔を上げた。
 木陰にいるからとかを差し引いても、やっぱり顔色が悪い。

「お前、ちゃんと水分…」

 取ってるのか。そう言いかけた俺は、琴子がそのまま後ろに倒れるのを見て言葉を失った。
 咄嗟に腕を出すが間に合わず、琴子はドサッと茂みに倒れ込む。
 
「琴子!!」

 俺の声を聞いて、部員たちも異常に気付いたようだ。
 俺は集まる人の気配を感じながら、琴子を抱き上げた。

「琴子、琴子!」
「いり、ぇく……」

 琴子の体は酷く暑かった。それに、目にも力がない。意識障害とまでは言わないけど、あと少し気づくのが遅れたらそうなっていただろう。
 俺は琴子を抱えたまま立ち上がった。騒ぎに気付いた須藤さんが、遅ればせながらやってくる。

「なんだ、相原どうしたんだ?」
「熱中症です」

 多分、だけど。十中八九、そうだろう。
 俺はぎろっと須藤さんを睨んだ。
 大学生だ、自分で管理すべきだという意見もあるかもしれないが、あんな風に玉拾いを任された琴子が気安く休憩を取るとは思えない。こいつはけっこう真面目なんだ。
 須藤さんが部長だというなら、きちんと把握しておくべきだと思う。
 俺はぐったりとした琴子を横抱きにしたまま、保健室へと向かった。





                                   *******************






 琴子は案の定熱中症になっていて、今はエアコンの聞いた涼しい部屋で休んでいた。
 俺のシャツを掴んで離さないから、勢い、俺も一緒にいる。
 何とか握る場所を変えさせてベッドに下ろしてはいるが、図らずも俺は琴子に膝枕することになっていた。
 見下ろす琴子の体には、脇の下や首の後ろ、太腿の付け根などにアイスノンが当てられている。熱射病一歩手前だったから、とにかく血管を冷やしてやらなきゃいけない。
 
「ったく…もうちょっと要領よくやれよな」

 汗でぺったりと張り付いた前髪を退けてやりながらそう言うが、琴子からの応えはなかった。
 この状況を知ったら、きっと大騒ぎして喜んだだろうに。相変わらずタイミングの悪い女。
 先ほどよりは顔色もいいけど、触るとまだ熱いし、熱もあるだろう。もう少し休ませたら、今日は連れて帰らなくては。
 お袋に迎えに来てもらった方がいいな。
 きっと、すっ飛んでやってくるだろう。
 俺はポケットに入れていた携帯で、お袋にメールを入れた。直後、すごい剣幕の電話がかかってくる。
 琴子ちゃんは無事なの!?と息巻くお袋をなんとか宥め、俺は何時ごろ迎えに来るのか確認した。すぐにでも出るというから、一時間もしないで来るだろう。そのくらい休ませれば、動かしてもいいはずだ。
 さて、そろそろまた水分も取らせないと。

「琴子、起きろ。少し飲めよ、琴子」

 俺はスポーツドリンクの入ったペットボトルを琴子の唇に押し当てた。
 琴子がうっすらと目を開けて、僅かに唇を開いた。そこに、スポーツドリンクがゆっくりと流れ込んでいく。
 細い首がコクッと上下して、嚥下するのを俺はじっと見つめていた。
 どうしてそんなところが気になるんだろう。こいつが具合が悪いからだろうか?
 
「あつい…」
「まだ熱いか?アイスノン変えるか」
「ん……このまま、で、いい。入江くんの手、気持ちいー…」

 俺の手を頬の下に敷いて、琴子がふわっと笑う。
 俺は何とも言えない気分になった。よくわからない、もやもやしているような、それでいてくすぐったいような。
 琴子は再び眠ってしまったようだ。
 やがてお袋から到着したと電話が入るまで、俺は身じろぎもせず琴子を見下ろしていた。









 大事を取って数日休んだ琴子だが、また何もなかったかのように笑顔で部活に出てきた。
 復帰当日、松本に耳を引っ張られた須藤さんが頭を下げて、琴子を驚かせた。
 松本は「末端の部員にまで目が届かなくて何が部長なの!」と須藤さんを叱り飛ばしたらしい。そうして俺の言いたかったことを松本が代弁してくれたから、俺はもう須藤さんには何も言わなかった。
 琴子は復帰早々、さっそく玉拾いをしている。
 見慣れたツインテールがぴょこぴょこ茂みの中で揺れて、時々琴子が顔を覗かせた。
 俺を見てニヤけてるのが遠目にもわかる。 
 ったく、あんなことして『休憩』だと言ってるから倒れるハメになるんだ。
 俺はラケットを小脇に抱え、持ってきていたスポーツドリンクを持って琴子のところへ行った。琴子は俺が近づいてくることに気付いて、嬉しそうに目を輝かせている。

「おい、また倒れるつもりか?」

 俺は飲んでいたスポーツドリンクを差し出した。
 懲りもせず満足な休憩も取らずに玉拾いをするなんて、こいつは馬鹿かと思い――そうだ、馬鹿だったと思い直す。
 琴子は急に突き出されたペットボトルに驚いたのか、大きな目をさらに大きく瞬かせて俺とペットボトルを見比べていた。もしかして、驚いたのはお前を気遣った俺に対してか?
 
「あ…ありがと」
「…重たいお前をまた運ぶのはゴメンだからな」
「ひどいっ」

 琴子は剥れると、ぐいっとスポーツドリンクを煽った。
 あの日、保健室で見たのと同じ。白い喉が上下して、スポーツドリンクを流し込んでいく。つぅ、と琴子の肌を伝う汗からも目が逸らせず、俺はそれを振り切るようにため息をついた。
 なんだか、酷く喉が渇く。
 俺は琴子が口を離したペットボトルを奪うと、残りを全部飲み干した。

「あっ」
「なんだよ」
「う、ううん……別に」

 琴子が目尻を赤く染めている。
 俺はその様子に少し溜飲が下がり、琴子をからかいたくなる気持ちがむくむくと頭を擡げてきた。

「間接キスとか思ってる?」
「……」

 思ってるのか。俺は別になんとも思わないけど?
 こんなこと気にするなんて、こいつらしいよな。
 俺は空になったペットボトルをぐしゃっと潰すと、そのまま琴子に投げた。
 潰れたそれが不格好な弧を描き、琴子の手の中に転がるように落ちる。琴子が素っ頓狂な声を上げた。

「え、わっ…入江くん!」
「捨てといて」

 間接キスも何も、もうキスしてんじゃん。
 あれをカウントしてないのか、馬鹿だから忘れちまってるのか。
 どっちでもいい。俺には関係ない。
 まだこの気持ちに名前を付ける気なんてないんだから――。




 俺はじりじりと照りつける太陽を一睨みすると、琴子の拾ったボールを一つ持ってコートへと戻っていった。




 END








須藤さんって、琴子ちゃんをこき使うんですよね。もっと優しくしてあげてよ~って思ったもんです。
片思い同士、盟友って感じなのかもしれませんが……あんなに琴子ちゃん可愛いのにね。
だもんで、松本(姉)に叱ってもらいました。むしろそこが書きたかったんじゃないかとすら思ったり(笑)。
俺の琴子に何すんだ!という感覚なくせに無自覚な入江くん。ああ、まだこの頃君は野獣でもなく、ただひたすら青かった…。

お題配布元:TOY様
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~ Comment ~

 

誰よりも早くに異変に気付くなんて愛だわっ∨ 認めてないだけで琴子が一番なのね♪ 結婚後…夫婦verも見てみたいです (≧∇≦) 熱中症で倒れた新妻を優しく看病する夫… いいわぁ∨ 朦朧としてて水を飲めない琴子に口移しで水を飲ませたり いろいろかいがいしく看病♪ いやぁ~んなんか萌えるぅ でも夫になったら須藤さん半殺しにしそうだけど(-.-;)ぜひ夫婦ver見てみたいです

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同感です~♪ 

テニス部時代の直樹はまだ無自覚の域だけど、なんだかんだ言いつつちゃんと琴子ちゃんのことはよ~く観察してて(!)、だから熱中症に気付くのも必然だったのかも。紀子ママに冷やかされるのも分かって居ながらちゃんとお迎え頼む辺りも、周囲から観ればもう完全に「好き」なのにね~♪おほほ。微笑ましいわあ。
私も須藤先輩にはもっと琴子ちゃんを大切に扱って欲しかったし、松本姉にガーンと言って貰いたかったので、お蔭様ですーっとしました!これに懲りて少しは須藤さんも部長らしくなってくれるといいんだけど(笑)
この時期の青い入江君と琴子ちゃんも大好きなので、読めて嬉しかったです。玉拾いしながら入江君を遠目で眺めるのを「休憩」って喜んでいる琴子ちゃんの愛らしさにも萌え~♪ですが、それに気付いててちゃんとケアしに寄って行く入江君も「イケズ~♪」と掛け声を掛けたくなります~♪たくさんの萌えポイント有難うございました!

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こんにちは! 

琴子の喉元を見てイライラモヤモヤするあたり、青さを残しつつも、高校生のころよりも若干素直に行動できるようになった?入江くん。
今回も熱中症で倒れたらすぐに抱きかかえ…、どんだけ琴子のこと見てたんだよっ!メチャクチャ気になってるじゃん!まぁ、入江くんが琴子をバッチリ見ててくれたおかげで、琴子は事なきを得たわけですけど。
脇の下や大腿の付け根あたりのアイスノンは、保健室の方がされたのかしら?それとも入江くん?入江くんなら・・・ムフフッ、いらぬ妄想をしてました(笑)
とっても楽しませていただきました。ありがとうございま~す!

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>あやみくママ様 

>あやみくママ様

ね、ホントに実は琴子ちゃんが一番なくせに!ですよね(笑)言わなくても愛が見え隠れしているのにまだ認めてなくて、もどかしいったらありません。
そして、夫婦ver.書いてみたのですが、ぁ、甘いような甘くないような!?優しく看病してくれないんですが、どうしましょう~!?須藤さん半殺しは楽しそう(酷)なんですが(^m^)フフッ

>narack様 

>narack様

無自覚で青く……ぷぷって密かに笑いが零れてしまいますよね。

あんな純粋な琴子ちゃんが計算で動けるはずがないのに(F組だし)自分の気持ちのせいだって気づけ~!とどつきたくなります(笑)。
そう、この青さの反動が後の猛獣に……って、納得なんですね(笑)!なんと頼もしい~!
恋人未満の絶妙な距離、いいですよね♪入江くんの気持ちを窺いつつ、好きで仕方ない琴子ちゃん。そして、認めてないけど一番大事にしてる入江くん。その距離感を守りつつ、またこの頃の設定で妄想したいなと思ってます(^^)

>ひろりん様 

>ひろりん様

なんせ、一人暮らしを始めた途端に琴子見たさに(勝手に断定)部活動に出てきちゃうくらい、無自覚に琴子を見てますから♪傍から見たら、あの二人はカップル扱いだったと思います(笑)。
須藤先輩も悪い人じゃないのはわかるんですが、琴子ちゃんを邪険にしすぎー!と思ってて。アニメでも、妊娠したって知ってるくせに、松本(姉)の病室にかけつけた際に琴子ちゃんと突き飛ばしたりしてて、酷い…と思ってたんです。なので、私も今回松本(姉)にびしっと怒られた須藤さんを書けてスッキリ♪
たくさんの萌えポイントを拾ってくださり、ありがとうございました!

>あーや様 

>あーや様

はじめまして!
この辺境の地までようこそおいでくださいました(^^)

ツンデレって、入江くんのためにある言葉な気がしてならないくらい、私もツンデレな入江くんが好きです。
だから、あーや様にそんな風に言っていただけてとても嬉しくて!ありがとうございます♪
野獣やらツンしきれていない入江くんも転がっていますが、ぜひ楽しんでいってくださいませ。
またのお越しを心からお待ちしております!

>たーくんママ様 

>たーくんママ様

これで素直と言われるんだから、入江くんの素直ハードル、かなり低いですよね(笑)でもホント、よくぞここまで成長した!と思ってしまうくらいの入江くんのツンっぷりを見ていただけて、嬉しいです。
ほんっと、それだけ見てるならもう常に横に置いておきなよ!と言いたいですよね(^m^)
アイスノンは、入江くんです。ええ、そこでも青さ爆発させればいいよ!と思うので(笑)。
プチ劇場で書こうかと思ったんですが、何かみょ~~~にエロくなったのでやめました(^^;入江くん、琴子ちゃん限定の欲求がたまりすぎでした…。
次はこの夫婦ver.をアップできたらと思いますので、また見てくださいませ♪よろしくお願いいたします(^^)

>ぴくもん様 

>ぴくもん様

こんにちは~!お忙しい中、ありがとうございます!
ぴくもん様に後ろからスコーン!とやられたら、入江くんも認めてくれないですかね(笑)一番もどかしい時ですので、書きながらウズウズしておりました。練習しながらも琴子ちゃんのいる位置を確認し、休憩を取っているかどうかすら把握している入江くん。まさに青春真っ盛りです♪

そして、密かな私なりの人物像にある松本姉のかっこ良さや、琴子ちゃんの真面目さを拾ってくださって、ありがとうございます!これを描こう、と決めていた部分ではないのですが、揺るがないようにしようと思っている部分ではありますので、嬉しかったです(^^)
お題半分クリアですが、後半はギャグ色が強く(後、エロ色)……怒涛の勢いで書けたらいいな、と思っております♪完遂できるように頑張りますね!ありがとうございました。

>紀子ママ様 

>紀子ママ様

野獣の見え隠れする青い入江くん、いいですよね♪全くの無自覚もいいですが、この絶妙さが大好きです(^^)
須藤さんの琴子ちゃんへの態度、酷いですよね!彼からすれば「松本と一緒にするなぁ!」というところなのかもしれませんが、入江くんからすれば絶対逆だと思って(笑)。もちろん、琴子ちゃんスキーな私などからすれば、須藤さんはかなり曲者キャラだったりします。ガッキーと同じ扱いやすさはあるんですけれども(笑)。

他人に興味のない入江くんが、唯一興味を示すのが琴子ちゃん。
当然、琴子ちゃんの異変に気付くのも入江くん!結婚後は触りまくれることを約束するので、これからも琴子ちゃんを見ててやってほしいな、と思ってます(*≧m≦*)プッ

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>吉キチ様 

>吉キチ様

琴中病…!
なんてしっくりくるんでしょう!入江くん、耳かっぽじって聞きなさい!!と言いたい(笑)。
そうしてモヤモヤすることも、琴中病の症状の一つですよね。
とっとと認めちゃえば、それが一番の薬になるんですけどねぇ……まだ先なんですよね。ここで認めておけば、かわいい琴子ちゃんと普通の恋人のような時間が過ごせたのに。もったいない天才くんですよね(笑)。
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