*初恋*

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 濡れ衣 掌中の珠 -お手入れ編-
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「二次創作」
短編

愛しの貴方へお届け物を

 
 濡れ衣 掌中の珠 -お手入れ編-
A組の皆さんが壊れてしまいました…。





 昼休み。
 自分のものよりずっと大きなお弁当箱を持って、琴子はA組に顔を出した。
 相変わらず頭の良い人たちの集まるA組は敷居が高いが、これでも最近はだいぶ慣れてきたところだ。
 休み時間でも勉強している人が多いのも知っているので、琴子は開いたドアからひょこっと顔を出すと、お目当ての人を探した。

「あ、いた!入江く~ん!」

 後ろの方の席に座った直樹が、じろっと琴子を見る。
 嫁さん来たぞー、という勇気ある冷やかしも何のその、直樹はすたすたと琴子のところに来た。

「何の用だよ」
「お弁当忘れたでしょ?届けてやってくれって。はい、どうぞ」

 自分のお弁当包み(ピンクの子豚柄)とF組で交換したのは、直樹の物を使っていたかった琴子の恋心と、ちょっとした嫌がらせである。
 案の定、ピンクの子豚柄の包みを見た瞬間、直樹はひくっと顔を引きつらせた。
 丁度そこへ、トイレから帰ってきた渡辺が合流した。

「琴子ちゃん、来てたんだね!…なんでお前、睨んでるわけ?」
「別に」

 渡辺ににこっと笑う琴子は、同性から見ても可愛く見えただろう。重雄が言い切るように、器量はそう悪くないのだ。(胸はないけれど)
 勉強でピリピリしたA組において、F組で勉強に捕らわれないのほほんとした琴子は、主にA組男子にとって魅力的だった。

「入江くんのお弁当、届けに来たんです」
「ああ、そうなんだ。こんな大きな弁当、重たかっただろ?」
「ううん、大丈夫」

 ほのぼのと話をする二人が、きっと面白くなかったのだろう。直樹はふんっと小馬鹿にしたように笑う。

「どうせ置き勉だから、鞄も空っぽだろ。弁当二つでようやく普通じゃないの?うるさいから、とっとと帰れよ」

 あんまり冷たい言いように、琴子もさすがにカチンときたらしい。
 むぅっと口を尖らせたかと思うと、よよよ…とわざとらしく渡辺の腕に縋り付く。

「入江くん、酷い…」

 琴子のそれが演技だとわかっていても、確かにお礼も言わずに悪態だけをつく直樹の態度は、誰が見ても酷かった。渡辺も例外なくそう思う。
 なので、この澄ました親友をからかってやろうとも思い、渡辺は直樹をちらっと見た。
 しょんぼりと肩を落とす琴子に、直樹の目の前でA組男子が集まってくる。そして、直樹を押しのけて口々に琴子を慰めにかかった。
 直樹の弁当を持つ琴子の手に自分の手を重ねる強者も出てきている。

「入江がいらないなら、俺がこの弁当食うよ」
「ほんと冷たいよなぁ」

 琴子の白い手が、クラスメートの手で隠される。
 直樹は何となくそれが不愉快で、舌打ちした。

「琴子、それ寄越せ」

 余計な手を振り払い、琴子が弁当を差し出す。まるで子犬のように直樹を見上げ「褒めて」と訴えているのがくすぐったいようなおかしな感じで、直樹はそれを無視することにした。
 直樹のその態度で、あるはずのない琴子の尻尾と耳が項垂れた気がする。
 馬鹿らしい錯覚だ、と直樹はため息をついた。
 また肩を落とす琴子に、今度彼女の味方をするのは女子だった。

「相原さん、せっかく持ってきてくれたんでしょ?ちょっと酷くない?」

 誰かが言いだせば、今までの直樹の態度もあってかあっという間に女子からもブーイングが出る始末。 
 これに慌てたのは琴子だった。すべてを知っているわけではないけれど…直樹がA組のクラスメート全員を友達となんて思ってないこともわかっているけれど、それでも、こういう態度は直樹を傷つけるとわかっているのだ。
 琴子はぱっと顔を上げると、ぶんぶんと首を横に振った。

「ううん、入江くんは優しいよ!昨日だって、一晩中あたしに…」

 ざわっと教室が揺れた。
 女子男子関わらず、脳内にピンクな妄想が広がる。



         *************



『入江くん…待って、もうダメ…』
『何言ってんだ、まだこれからだろ』
『けど……ああん!入江くん、あたしおかしくなっちゃう…!』



         **************



 ブーッッ!!!

 誰かが鼻血を出した。
 先ほどまで直樹を睨んでいた女子も、赤くなってきゃーきゃー言っている。男子は何人かが前かがみになっていた。

(こいつら、何を想像したんだ…

 呆れる直樹に対し、琴子は全く気付いていないらしい。

「…(勉強)教えてくれたりしてくれたもの!」
「お前はいっつも言葉が足りないんだよ!!」

 べし!!と直樹に叩かれた琴子が、口を尖らせて直樹を見上げる。

「何よ、嘘なんてついてないよ。だって入江くん、昨日はよくやったって褒めてくれて…」

 ざわわわわ!!!
 またも教室が揺れる。


         *************



『よくやったな、琴子』
『ん……あたし、上手にできた?』
『ああ。ちゃんと気持ちよかったよ』
『ふふっ、よかった。ちょっと口が疲れちゃったよ』



         **************


「ご、ご褒美…」
 
 誰かが呟く。聞き逃さなかった直樹が、ギロッとその男を睨んだ。
 なぜこの状況で、そんな単語が出てくるのかもわからない。
 直樹の苛立ちはピークに達した。

「琴子、来い!!」
「え!?きゃあっ」

 むんずと琴子の細い手首を掴み、直樹は琴子を連れて発狂する――できれば、勉強のしすぎだと思いたい――A組から逃げ出した。







「ったく、俺は静かに昼すら食えないのか…」

 人のいないところを求めた結果、二人して屋上まで来ることになった直樹は、ぐったりと疲れ切った様子でそう呟いた。
 途中に寄ったF組で自分の鞄を掴んできた琴子は、どうやら自分の発言がこの事態を巻き起こしたという自覚だけはあるのか、直樹の様子を窺っている。
 それでも、直樹と二人きりでいられるのは嬉しいのだろう。
 白い頬を上気させて、琴子はにこにこしていた。

「ね、お弁当食べよう?ここ気持ちいいし」
「お前って……」
「うん?」
「いや、いい」

 何か言いたかったはずなのに、結局何も言えなかった直樹は、ふいっと顔を背けるとピンクの子豚柄の包みを開けた。
 その横で、琴子も嬉々として包みを解いている。
 同じ中身のはずなのに、容器の違いか、それとも紀子の気合の入れ方の違いだろうか。
 琴子のものは、アルミカップから何から随分と可愛らしくなっている。
 並んで弁当を食べるなんて初めてのことだが、直樹は一つ、利点に気が付いた。

「…!ずるい!」

 琴子がよそ見をした瞬間に、直樹が彩のために入っていきゅうりを琴子の方へ移したのだ。
 気づいた琴子が口を尖らせている。

「迷惑料だよ」
「なっ…そ、そんなの言い訳じゃない。もうっ」

 ぶつぶつ言いながらも、琴子はきゅうりを口に放り込む。
 こんなのは二度と御免だけれど、きゅうりを押し付けられるのだけは悪くない。

「美味しいね、入江くん♪」
「…まーな」

 上機嫌な琴子の横で、直樹は黙々と弁当を片付けるのだった。



 END




一度くらい二人で弁当食べてたらいいのに、と思ったところから。
書いてみたら、思った以上にA組の皆さん(特に女子)が琴子に好意的で意外でした。嫌われる琴子ちゃんって想像したくないし、これはこれでいいかな、とか。女子は琴子に複雑でもあると思うんですけど、意外なことであっさり手のひら返したりもするかな…と思うんですが、いかがでしょう。そういうの一番入江くんは嫌いでしょうけど。
琴子だけは一貫して「入江くん大好き」「入江くんは優しい」なんですよね(^^)だから入江くんが惚れてくのよ~!って…あ、話がずれた。
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ププッ(笑) 

miyacoさん、こんにちは(*^^*)

お話の更新ありがとうございます!!

秀才揃いのA組生徒達のピンク妄想、朝から笑わせて頂きましたっ!!
入江くんって普段琴子に冷たいくせに、他の男子が琴子に興味持ったり褒めたりすると、途端に不機嫌になるのよね~
琴子の居候先が入江家だと金ちゃん達にバレて家に押しかけられた時も、意味深な言葉で金ちゃんを挑発して牽制したり。。。
実は何だかんだ言っても、高校の時から入江くんは琴子に対して独占欲の塊だったのでは!?
A組の女子達にしても、本当は秘かに入江くんに憧れ、狙ってはいるけれど、冷徹な入江くん相手に色恋沙汰なんて持ち出そうものなら軽蔑されること必至なので、静観してるって感じでしたよね。
なので、馬鹿にしながらも、A組の女子達にとって、あの入江直樹相手に猪突猛進で一途な琴子は、ある意味羨望の存在だったのでは。。。(プライドの高いA組女子達は決して認めないでしょうけど)
原作を読み、そのように感じていた私にとって、今回のお話は私の想像(妄想!?)が凝縮されていて、とても楽しく読ませて頂きました!!
もしかして、このずっと後のお話が「バカップルの同窓会 A組編」になるのかな!?(笑)

こんにちは~♪ 

琴子の天然でかわゆいところって、A組の秀才君たちにもある種の癒しなんだなぁと思いました。入江、羨ましすぎるぞ~と思ってるんでしょうね。今回A組女子も琴子に同情的だったのは意外!それだけ入江の態度が醜かったんでしょうけど…。ホントに素直じゃないんだから!「俺の琴子に触んなよ!」って思ってるくせに~。青さ爆発だね!また、受験勉強で必死のA組の脳内にピンクの妄想が…。皆さん、イリコトで息抜きってところなんでしょうね。
モテモテ琴子にヤキモキ直樹…という設定大好きなので、今後もこんなお話読みたいで~す。よろしくお願いしま~す。

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>babaちゃま様 

女心は複雑ですよね…(^^;
バカにしつつも実は、とかはよくある話かと思います。

琴子もちゃっかりしてるので、仲良くお弁当タイムゲットすることができました(^^)
たまにはいいですよね♪琴子が上手に立ったって。
入江くんだって、きゅうり押し付けられたし(^m^)悪いことばかりではなかった…はず!?

>michi様 

そうそう、金ちゃんが入江家に初めて押しかけた時なんて、明らかに挑発して牽制してましたよね!
あのシーンでは、琴子だけではんく私も「おお~!」と思いました。自分を好きだという女を、他の男が好きだと言うのは面白くないのかなぁ、とか。それとも「琴子ちゃんモテるのね」というママの台詞が気に入らなくて、武人の時のように「琴子が好きなのは俺」的な感じで、琴子の注意を惹きたかったのかな、とか♪

A組女子の複雑な心理って私も同じいイメージを持っています!
琴子が羨ましくもあり、かといって素直にそうは言えないプライドがあり。ふふっ、確かにこういう時間を重ねていって、あの同窓会に行きつくのかもしれませんね♪あちらでは、馬鹿にしてしまうプライドの方が強く出ていましたが。

>たーくんママ様 

私、琴子がモテる設定好きなんですよ~♪だって、絶対琴子は可愛いですし!そんな子が自分を慕って、見えない尻尾ぷりぷりですから……外部受験戦争で疲れた彼らには、癒しだと思います。女子って複雑なのかなぁと思うんですが、いかがでしょう?なんていうか、入江くんは気になるけど、自分たちは琴子みたいにできない。羨ましくもあり、妬ましくもあり。天秤はぐらぐら揺れてて、今回は同情の方に傾いたみたいですが(^^;

ヤキモチ直樹(無自覚)はまた書きたいです♪私も大好物なので!

>ピーチ様 

私も、テレビをつけては胸が苦しくなってしまって、妄想創作活動に入ることがありますから、お気持ちはわかります。原発のことや亡くなられた方のお話を聞くと、もうその後沈んじゃって沈んじゃって…でもイリコトに救われてる感じです。

イリコトのスタート地点なのに、意外に少ないんですよね。3年生だから修学旅行とかのお泊りイベントもないからでしょうか。
ほんと、もしイタキスが今時の少女漫画だったら、間違いなく際どいシーンがありそうな設定ですよね(^^;
(最近のは読んでないですが、なんとなく、すぐにやっちゃうイメージが…)
そんな時代にツンを極めた入江くん。ある意味尊敬です!尊敬のあまり、これからもこの手で弄っていきたいと思います(え!?)♪

劇甘ですか!他にもそういうお声頂いてるんですよ~(^^)
砂を吐くようなの目指して、今日も今日とて妄想したいと思います!ピーチ様の心の叫び、がしっと受け止めさせていただきました~♪

>紀子ママ様 

そこが琴子ちゃんの可愛く、素敵なところですよね!
女のいやらしさが見えたら入江くんは見向きもしないはずで、入江くんが相手するってことは、そうしたものがないってことかと思います(^^)さっすが琴子ちゃん!
そう、いつも琴子ちゃんの言葉が足りないがために、入江くんは校長室や職員室でお説教なのですよ…ぷぷっ。

二人で屋上ランチ。
高校生なら1回くらいこういうことしててもいいよね、という妄想を楽しんでいただけてよかったです(^^)

笑いました~♪ 

楽しいイリコト&A組のお話しに久々にガハハと笑いました~♪有難うございます。放射能の某専門家によると笑う人ほど放射能汚染が少なくて済むとか、真偽は不明ですが、信じて救われたいと思います(笑)
私もA組の成績優秀な女性陣は「正義か否か」じゃなくて「自分に有利か不利か」で小賢しく味方につく側を判断しそうだから、今回は「琴子ちゃんに味方で正解」と踏んだのだろう、ふふん、と思いました。そこらへんがまた入江君が「頭の悪い女は嫌い」と言いながら実際にはA組女子を相手にしないで琴子に惹かれちゃう理由かも~♪屋上で2人仲良くお弁当って、実は入江君も秘かに気に入ってたりして~♪後々夫婦になった2人が子連れピクニックとかで思い出したりする微笑ましいシーンが目に浮かびました~♡また妄想しちゃった(笑)

>hiromin様 

学校生活の楽しみの1つはお弁当かなって思ったんです(単に私が食い意地が張っていただけ!?)。
そして、共学なら好きな人と食べるお弁当も絶対憧れるんだろうな、とか。もれなく琴子ちゃんも憧れていたと思います♪なので、妄想で!
A組女子の皆様はみごとに小賢しく(笑)なりましたが、結果として、真っ直ぐな琴子ちゃんの気性が際立つことになったかも?あんな風にコロコロ態度を変えるのは、入江くん一番嫌いそうですよね。
子連れピクニックでは一度恥をかいている二人ですので(笑)別の機会にぜひほのぼのしてもらいたいです♪

ところで、放射能ってそういうものなんですね(笑)そういう他愛ないものをちょっと心の隅に留めて、日々を明るく過ごそうとするhiromin様をますます応援したくなりました!

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>りりかママ様 

今、テレビをつけても必ず流れてくる被災地のニュース、携帯に引っ切り無しに届く地震速報。計画停電に原発と、明るい話題なんて探すのも大変になってしまいました。本当は、かなり迷ったんです。ここを続けることってどうなんだろう?と。
でも、暗い中だからこそ、ここを見て気分転換をしてほしいと思いました。そして、りりかママ様のように少し笑えた、と言ってくださる方がいらしてくださって、更新を続けてよかったと思っています。至らぬところの多いブログではありますが、気の抜けるようなお話だけは置いてありますので、またりりかママ様の気分転換のお役にたてたら幸いです!ぜひぜひ、また遊びにいらしてくださいませ(^^)

>吉キチ様 

女難の相!確かに、入江くんはそう思ってそうですね(笑)!

高校の頃の入江くんって、琴子を女として見ていない一方で、家に押しかけた金ちゃんを挑発して牽制したり、琴子に自分以外の男が関わるのを面白く思ってないみたいだな、とは思っていたんです。なので、このお弁当の時には、そうして過ごしても気にならない程度には、心を許していたのかもしれないですね♪
私的には、夏休みの宿題を写す際のベッド引きずり込み事件(?)の時から、実は特別だったんじゃないの?とすら思っているんです~。自覚したのはもっとずっと後だとしても!

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>hiromin様 

え、あれ?そうなんですか!
そこまでチェックしてませんでした。本文の表示のされ方は見ていたんですが(汗)
リコメ欄が見にくいのではお話にならないので、違うものに変えてしました。こちらはいかがでしょう?
前のはなんでそうなってしまうのかな。そういうデザインなのかな?仕組みに詳しくないのが悔やまれます…(--;

こうして支えてくださる方がいらしてくださるお陰で続けられるので、ありがたいです(^^)
教えてくださってありがとうございました!

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>hiromin様 

よかったです~(^^)
やっぱり、見やすい&わかりやすいのが一番ですので!教えていただいて、こちらこそありがとうございました!

修学旅行ネタもいいですよねぇ♪私は最終学年ではなく、2年生で修学旅行に行くタイプの学校だったので今まで書いたことがなかったのですが、調べてみたら、最終学年で行くところも多いのですね!斗南もそういう設定にしちゃえばいいのか!とムフフ笑いが止まりません(笑)
私服で自由行動なんてなったら、そりゃあ張り切っちゃいますよね!青春ですね♪どこがいいかな、やっぱり定番の京都、奈良とかでしょうか。あ~~、入江くんと琴子ちゃんに行ってほしいところがいくつかあります~!
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