*初恋*

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 申請に関してご連絡(花音様へ) 再会 -2-
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「長編」
再会

再会 -1-

 
 申請に関してご連絡(花音様へ) 再会 -2-
ある日、病院に思いがけない人が入院してきた。
思いがけない人との再会で、琴子の周囲がにわかに騒がしく…?



再会 -1-




 何の変哲もない日常を送りながら、琴子は今日も元気に仕事に精を出していた。
 直樹もまた着実に経験を積み、忙しく過ごしている。
 
「入江さん、はい。頼まれていたアレンジ」
「うわぁ、綺麗!ありがとうございます~♪」

 琴子は差し出された花かごを受け取り、顔を綻ばせた。
 花かごにある花は、葬儀屋で余った花を譲り受けたものだ。いつもなら、忙しい看護師はお洒落に飾る時間も余裕もないため、無造作に花瓶に突っ込まれることが多いのだけれど、今回は入院患者の中にフラワーアレンジメントを趣味とする人がおり、その人が見事なアレンジメントを作ってくれたのだ。
 琴子はそれを上機嫌でナースステーションのカウンターに飾った。
 その時だった。
 ぽとり、と花の一つが落ちる。オアシスに上手く刺さっていなかったのだろうか。
 琴子は不思議に思いながらも花を広い、適当なところにぶすっと突き刺した。

「うん、これでよし!」

 不自然に一輪だけ飛び出した形になったが、琴子は満足らしい。にこっと笑って出来栄えを見ると、遠くに直樹を見つけて走って行った。




*****************




 廊下を走るな、とお決まりの注意を受けるも、琴子はえへへっと直樹の腕にまとわりついた。
 直樹に会えたことが嬉しくて仕方ないらしい。
 
「歩きにくい」

 ぱっと腕を解かれ、琴子は頬を膨らませる。だが、仮にもここは職場。職員用通路でもないし、自重すべきなのはわかるので、大人しく引いた。
 そして、直樹を見上げる。

「入江くん、どこ行くの?今日はオペなかったでしょ」
「ああ……そうだな。お前も来るか」
「へ?」

 少し迷ったようだけれど、直樹は琴子を連れて歩き出した。
 途中で清水主任に会うと、少しだけ琴子を借りていくことの了解を取る。公私をきちんとわける直樹なので、変に疑われることもなくそれはすんなり認められた。
 歩きながら、琴子は直樹に問いかける。

「ねえ、どこ行くの?」
「十階」

 そこは特別室があるフロアである。なんでそんなところに、と琴子は目を瞬かせた。

「沙穂子さんが入院してきてるんだよ。挨拶行かないのも変だろ?」
「沙穂子さん?」

 忘れようにも忘れようがない名前だった。
 大泉沙穂子――かつて、直樹が一度は婚約寸前までいった女性である。琴子顔が嫌でも曇った。

「あ、あたしも行く…行かなきゃいけないの?」

 沙穂子自身に恨みがあるとか、そういうことは一切ない。ないけれども、気まずさはある。
 かつては、直樹を巡って色々あったのだから。結果として琴子は直樹の奥さんになったけれど、沙穂子は去った。あの後彼女がどう過ごしていたかなどしらないけれど、恐らく沙穂子だって琴子と同じだろう。
 何の病気や怪我で入院となったかは知らないけれど、自分が行っても負担になるだけのような気がする。
 それは申し訳なくて、琴子は足を止めた。

「いいよ、あたしはやめとく」
「お前が来なかったら、逆に変に気にされるぞ。いいから来いよ」
「でも…」

 それでも言い淀む琴子の手を掴み、直樹はまた歩き出した。
 こうなると、直樹はてこでも譲らない。琴子は連行される囚人のように一歩後ろを歩いて、直樹と共に十階フロアに立った。



 一応このフロアの作りは頭に入っているものの、琴子の担当患者でこんなフロアに入るような人はいなかったこともあって、実は新人の頃施設内を把握するために訪れた以来の、久々のフロアである。
 琴子はきょろきょろと辺りを見回した。
 病室には部屋番号のプレートがあるだけで、その下に名前は入っていなかった。
 普通なら大部屋、もしくは二人部屋か個室なので名前が入るのだけれど、ここは違ったっけ?と思いつつ、琴子は迷うことなくある一室の前で足を止めた直樹を見た。
 特に緊張している風でもない直樹は、実に堂々としている。
 彼の中で、あれはすでに過去のことなのだろうか。琴子はこんなにも緊張しているのだけれど、男と女では感じ方が違うのかもしれない。
 直樹はコンコンとノックをして、琴子の戸惑いなど気にもせずにドアを開ける。

「まあ、直樹さん。琴子さんも!」
「お久しぶりです」

 琴子を隣に立たせ、直樹が挨拶をした。小さい声になってしまったけれど、琴子も続けてこんにちは、と頭を下げる。
 沙穂子はパジャマの上に薄手のカーディガンを羽織り、ベッドの上に座って本を読んでいた。
 
「ごめんなさい、こんな恰好で」
「病院ですから当然ですよ」

 そう言って世間話を始める二人を、琴子はぼんやりと見ていた。
 窓から光が入り込み、直樹と沙穂子を照らしている。なんだか、とても綺麗だった。
 直樹は琴子の夫のはずなのに、そうではないような気もしてしまう。二人の会話に入っていけないからだ。
 別に、取り立てて難しい話をしているわけではないし、二人にしかわからないことを話題にしているわけでもない。
 それなのに、琴子は会話に入っていけなかった。
 時折、気を遣ってか沙穂子が琴子に話を振ってくれるものの、どうもうまく返せない。直樹はそんな琴子をちらりと見るものの、別段何か言うこともなかった。
 そもそも乗り気ではなかった琴子を引き摺ってきたから、琴子の態度が今更少しおかしくても気にならないのかもしれない。
 
(まだ…かな。終わらないかな、早く)

 表面上笑顔を張り付けたまま、琴子は密かにそんなことを思っていた。
 やがて、20分ほどしてから、直樹は帰ることを告げた。琴子もこれ以上仕事を抜けることはできない。直樹だってそうなのだろう。

「ありがとう、直樹さん。とっても退屈していたから、楽しかったわ」
「いえ、こちらこそ――琴子、戻るぞ」
「は、はい!」

 つい、医師としての直樹に答えるように返事をしてしまう琴子を、直樹が変なものを見るように見ている。
 けれど、やはり何も言わなかった。
 ただ軽く肩を抱かれる。それだけでも今は嬉しくて、琴子はようやく偽りではない笑みを浮かべ、沙穂子を見ることができた。
 これでは、今まで放っておかれたと拗ねているかもと思ったけれど、嬉しいものは嬉しいのだから仕方ない。
 琴子は沙穂子を見ると、心からの言葉を口にした。

「沙穂子さん、お大事に」

 それまで、ろくに話に参加しなかった琴子からの労りの言葉を、どう受け取ったのだろうか。
 沙穂子は少し困ったように首を傾げると、小さく頷いた。
 
「ありがとう。琴子さんも、お仕事頑張って」

 なんだろう、変だな――そう思うものの、琴子の感覚の問題である。
 隣の直樹は特に違和感を感じていないのか、平然とした顔をしていたから、やはり気になったのは自分だけなのだと思う。
 琴子は先に出た直樹の後から出て、ゆっくりとドアを閉めた。
 名札もない病室を見て、それから、あ…と気付く。
 変なのは沙穂子や名札のことだけではなかった。
 大泉というバックグラウンドがありながら、何のお見舞いも来ていない様子だったことも違和感の一つだと気付いたのだ。
 こんな特別フロアに入るような人なのだから、そこには大量のお見舞い品や花が届いていてもおかしくないのに、沙穂子の病室には何一つなかった。
 一体、沙穂子はどうしてここに来たのだろう?

「琴子?どうした?」
「あ…ううん。なんでもない」

 何にでも首を突っ込んでしまうのは、琴子の悪い癖だ。
 これがただの友人相手であれば、琴子ももう少し積極的に知りたがったのかもしれないが、相手は沙穂子である。
 何となくあれこれ詮索するのも気が引けて、琴子はぷるぷると首を横に振った。
 それに、必要があれば直樹が教えてくれるはずである。
 琴子は先を行く直樹を追いかけ、パタパタと廊下を小走りで走ったのだった。






というわけで、沙穂子さん再登場です。
山なしオチなしの可能性大であるものですが、よろしければ片手間にお付き合いくださいませ(^^)
 
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~ Comment ~

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次作がシリアス系?と告知されていたと思いますが、沙穂子さんの登場とは予想してませんでした。決して悪い方ではないのですが、私の心がどんよりと重くなる感じなのはどうしてでしょう…。
どこが悪くて入院?何かワケあり?あれから結婚は?etc. 琴子同様私もいろいろと沙穂子さんにお尋ねしてみたい気分です。
続き楽しみにしてます!

新連載ありがとうございます 

miyacoさん、おはようございます(*^^*)

またまた新しいお話をありがとうございます!!
今回はmiyacoさんには珍しく(?)シリアス系ですね。。。(笑)
バカップルシリーズが大好きな私ですが、このお話も凄く良いですっ!!
アレンジメントの花が落ちたのは、これから始まる波乱の前兆なのか、沙穂子さんの現在の生活や直樹に対する想いはどうなのか等々、とても興味をそそられるお話です。。。
直樹が選んだのも愛しているのも自分だと分かっていても、琴子にとっては、沙穂子さんと直樹が一緒にいる所を見ると、コンプレックスを感じてしまい、不安なんでしょうね。。。
あ~、お話の続きが待ち遠しいですぅ~!!

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いろんな伏線? 

新しいお話しですね。
タイトルを見て、誰との再会だろうと思っていたら、沙穂子さんなんですね。
直樹と沙穂子さんの会話や病室の様子に違和感を覚える琴子が気になりました。第1話にいろんな伏線が張り巡らされているようで、この先読み進めるにつれまたここに戻って読みなおすことになる予感。
miyacoさんはギャグもシリアスも桃色も巧みに描かれる多彩さがほんとに凄いと思います。続き楽しみにしています。有難うございました。

>maru様 

こんにちは!

そうなんですよね、悪い人じゃないんだけど、どうしてもマイナスのイメージが付き物で。
なんとなーくモヤモヤしてしまう琴子ちゃんの気持ちとか、ちゃんと書けるようにしたいなぁと思ってます(^^)
ぜひぜひ、最後までお付き合いくださいませ♪

>babaちゃま様 

さて、何で彼女はここにいるのでしょう~?
病気の割には事情がありそうなご様子ですし、琴子も実はすっごく気になってると思います(^^;

ある意味IFなんだけど、隙間のような気もするし…なこのお話。
受け入れていただけるといいな~と願ってます!

>たーくんママ様 

そうなんですよ、シリアス系~。
色々な登場人物のいるイタキスですが、沙穂子さんってどうもね…彼女自身悪い人ではないのはわかってるんですが、なんとなーくモヤモヤしたものの残るお方ですので、思い切って触れてみることにしました。
もう完全に妄想です。これぞ二次って感じですが(^^;
ぜひぜひ、最後までお付き合いくださいませ♪

>michi様 

こんにちは!

そうなんです、珍しく(笑)!シリアス系なんですよ~。
バカップルとは全く違った雰囲気ですので、こいつエロばっか考えるわけじゃないんだなぁと思っていただけると嬉しいかも(笑)
「落ちる」って、やっぱり何だか嫌な印象ですよね……何事もなく、ただの再会で終わればいいんですが(って、それじゃ本当に山なし落ちなしになってしまいますが)…!?

続きを待っていてくださる方がいると思うと、また頑張れます!お待ちくださいませ~(^^)

>ナッキー様 

こんにちは(^^)

そう、沙穂子さんって悪い人じゃないのに、最後いかにも身を引きますって感じだったから、悪い人じゃないのわかってるけど、傷つけられた人で終わってしまっていて、そこが残念だなぁと思ってたんですよね。もちろんあの引き際は見事だったので、そこから先は読者の妄想でってなる部分だとは思うのですが。
なので、もんそうしてみました!
入江くんラブすぎて、自分に自信が持てない琴子がどうするのか、沙穂子さんが出てくる時点で明るいお話にはなりえないのが申し訳ないのですが、お付き合いいただけると嬉しいです♪

>りあ様 

こんにちは!

そうですよ、いつもエロばっかのピンク脳なわけではないのです(笑)。いや、8割はそんなんですけど、2割くらいはね…?ということで。
私はすっごーく普通の、そこら辺にいっぱいいる庶民なので入院するのに特別室はおろか、二人部屋だって尻ごみしちゃうんですが、どういう人が使うんでしょうねぇ。書いておいてなんですが、ネットで調べたところ、すごい施設はすごかったです。1部屋じゃなかったり(^^;
本当にお金持ちが使うんだろうなって思って見てました。沙穂子さんはどうして、そんなところにいるんでしょうねぇ。

みんな無事に終わりますように願いつつ。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ(^^)

>hiromin様 

原作IFを1つアップして以降、増える感じのなかった長編なのですが、思い切ってみました(^^)
いや、そんな大した伏線は……それなのに回収し忘れとかしそうで、ドキドキしてます(笑)え、そういえばあれどうした?ってならないようにせねば…!
最後まで「どうなるの?」って思っていただけるよう、頑張ります!こちらこそ、読んでいただきありがとうございます~!

>紀子ママ様 

あのままイリコト世界からは消えて行く定めのお方だったのかもしれませんが、未練たらしく再登場願ってしまいました(^^;
入江くんに未練あるんだろうな~っていう終わり方が気になってて。今はもうそうじゃないよね、と思いたかった=書きたかったのです。が、何故かなんだか波乱含みになってしまって(笑)
無事に終わるよう祈ってやってください~。

沙穂子さん、悪い人じゃないんですけどねぇ。彼女のせいで琴子が泣いたせいでしょうかね…。

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>吉キチ様 

沙穂子さん、どうしたんでしょうね♪・・と、♪マークがこれほど似合わない状況もないのですが(^^;

直樹も意味なく行動するタイプではないので、何か考えてるんでしょうけど…言わないんですよね、このお方。ほんと、言葉足らず……毎回それで喧嘩とかしてるイメージがあります(笑)
この後、その言葉足らずがどうしていくのか(いや、どうもしない可能性もあるんですけども)見守ってやってくださいませ(^^)

>naotti3様 

沙穂子さんが出てくる時点で、明るいエロパロにはならないんですよねぇ。
ちょっとやってみたい気もしますが、彼女そういうキャラではないし(笑)沙穂子さんが嫌な女にならないよう、気をつけて描いていきたいと思います(^^)
それほど長くならないと思いますが、ぜひお付き合いくださいませ♪
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