*初恋*

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 花冠の姫君 -前- 僕の結婚式
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「二次創作」
前後編

花冠の姫君 -後-

 
 花冠の姫君 -前- 僕の結婚式


花冠の姫君 -後-



 直樹は釈然としない気分で歩いていた。
 今日は、父親の親友が一家で遊びに来ると聞いていて、朝から紀子は大騒ぎだった。
 何でもそこの娘が、えらく紀子好みらしい。
 彼女の勝手でついこの間まで女装させられていた直樹には、面白くない話だった。
 今では忌み嫌っている姿をまた目にしなくてはならないのだ。
 そんなに女の子が欲しいなら、その子をもらえばいいじゃないか、とすら思う。
 だから、からかってやろうと思った。
 もうこんなところ嫌だ、二度と来たくないと思わせれば、紀子だってくだらない騒ぎをやめるかもしれない。
 男の子じゃどうしていけないんだ、と不貞腐れている直樹だったので、その作戦決行はすぐに決められた。
 庭を探しまわって、一番気持ち悪かったヒキガエルを捕まえる。
 そんなことをしていたから、訪問者一家への挨拶には出られなかったけれど、構わない。
 いつこのヒキガエルでからかってやろうか。そう思って歩いていたら、目の前に女の子がいた。
 長い栗色の髪を横髪だけまとめて後頭部に白いリボンをつけ、真っ白なサマーワンピースをを着ている。
 暑いからか白い頬がピンクに染まっていて、大きな目は紀子自慢の薔薇を見つめてキラキラしていた。
 可愛い、と思った。
 同時に、こいつが父親の親友一家の子供か、とも。
 確かに紀子好みだろう。服も髪型も、少し前に自分がされていたものによく似ている。
 琴子と名乗ったその少女に、直樹はヒキガエルを投げつけた。
 泣いている琴子がおかしくて、なんでこんなもんが怖いんだと嗤う。
 まるで少し前の自分を嗤うかのように。
 けれど。
 大声で泣いていた琴子が青ざめて、声もなくして小さく震え出すと、段々直樹も笑えなくなった。
 酷いとか、馬鹿とか、何か詰ってくれたらよかった。こんなものを怖がるお前が馬鹿だと言えたから。
 でも、琴子は震えるだけで。ヒキガエルを取ってやった後も、悲しげに直樹を見つめるだけだった。
 大きな目が潤んで、そのくせ逸らされることもなかったのが妙に頭に残っている。
 直樹はそんな琴子を見ていられなくて、その場から走って逃げだしたのだ。



 それから一時間ほど経つ今、直樹はまた薔薇の小路を走っていた。
 話に夢中になっていた呑気な大人たちが、一人戻ってきた直樹に対し、琴子がまだ戻っていないと気づいたのだ。
 広めの庭とはいえ、子供が一時間も見るような場所ではない。
 悪い想像を始めた大人たちを尻目に、直樹はまた庭に飛び出した。
 薔薇の中で目を輝かせて、まるで紀子が語るお姫様のようだった琴子なら、きっとあそこにいるんじゃないか…と思った場所があるのだ。
 迷子になって泣いている可能性もあるけれど、まずは、とそこを目指す。
 はたして。
 琴子はやはり、そこにいた。
 母が特にお気に入りの、薔薇の中のブランコに。
 泣き寝入りだったのだろうか。近づくと、眼尻に涙が光っていた。
 直樹は黙ってそれを拭う。
 あの時可愛いと思った笑顔はそこにはなく、苦しげに、悲しげに顰められた眉が面白くない。
 直樹は無言で薔薇に手を伸ばすと、紀子が大切にしている薔薇を遠慮なく手折った。
 そして、器用に花冠を作った。時々棘が直樹の指を傷つけたけれど、その度にぶちぶちと棘を除いて。
 それは女装をしていた頃、不覚にも喜んだことがあるものだった。
 いつか燃やすと決めているが、証拠写真も残っている。
 この花冠なら、琴子も喜んで、また笑ってくれるのではないかと思った。
 そうして、器用にピンクと白の薔薇の花冠を完成させる。
 眠る琴子の頭にそうっとそれを載せると、直樹は小さく謝った。

「…ごめん」

 もう泣くなよ、と言って、直樹は琴子の目に残っていた最後の涙を指で拭う。
 その時、琴子の眉間の皺が消えた。それが琴子が赦してくれた証拠のようで、直樹はホッとする。
 薔薇の花の中で、薔薇の花冠を被った琴子は、紀子が読み聞かせてきた物語のお姫様そのものに見えた。

 直樹はしばらく琴子の寝顔を見つめ、それから、別荘へと戻った。
 琴子を見つけた、と大人を呼ぶために。


 

 それから、琴子の無事を確認した大人たちがまたお喋りに興じる中、直樹と琴子は二人で遊ぶことになった。
 直樹は最後まで名乗らず、紀子も「ナオちゃん」としか呼ばなかったので、琴子はずっと「ナオちゃん」と呼んだ。
 まさかヒキガエルを投げつけた子が花冠をくれたとは思わないのか、琴子は嬉しそうに頭に花冠を載せたまま自慢する。

「これね、あたしの王子様がくれたんだよ!」
「…そんな間抜け面のお姫様なんていないだろ」
「ひどいっ」

 その日。
 一泊していく相原夫婦の間に、愛娘の姿はなかった。
 代わりに、入江家の愛息子のベッドで、大の字になって眠る二人の姿があったのだった。
 紀子はそれを写真に収め忘れたことを、その後数年に渡って後悔したという――。
 
 

              *************
 


「…ってなことがあったのよ。もう、いつどこの誰のお家かも覚えてないんだけど、今思えばあれがあたしの初恋かも」

 いきなり始まった琴子の思い出話を聞いていた直樹は、コーヒーカップの影で口を歪めた。
 ヨシヤ君から始まって、一体何人が初恋なんだかと馬鹿らしくなっていたが、最後のその話はさすがに聞き入ってしまった。
 直樹にとって肝心なところを綺麗に忘れている辺りが琴子らしい。
 琴子には曖昧なその部分も、直樹はしっかりと覚えていた。
 あの夏の日、初めて女の子を可愛いと思ったこと。
 素直に口に出せずに苛めてしまったこと。
 直樹は、あの日のことを初恋とは思っていないけれど、どことなく甘酸っぱいような印象はあった。
 少なくとも、あれ以降女の子を見てお姫様だと思ったこともなければ、花冠を贈ったこともない。
 もっとも素直に認める直樹ではなく。

「そんな間抜け面のお姫様なんていないだろ?」

 いつかのセリフをそのまま口にして、琴子の様子を窺う。
 残念なことに琴子は気付かなかったようで、むうっと頬を膨らませて腰に手を当てた。

「ひどい!あたしが間抜け面なら、入江くんはその間抜け面が好きってことじゃない」
「だから、そんな奴がそうそういるわけないだろってこと」

 早く気づけよ、バーカ。
 直樹は内心で笑う。琴子を可愛いと思って花を贈るような男がそうそう居ては堪らない。
 頭に大量の?を浮かべ小首を傾げる琴子を抱きよせ、直樹は低く喉を鳴らしたのだった。


 END



寝る前にぶわわ~って浮かんで、慌ててPC立ち上げてプロットだけメモっておいたのですが。
こんなことがあったらいいな、という…二次の醍醐味でした(^^)

っていうか、チビ直樹を書くとどうなるのかなーと思っていたのですが、蓋を開けてみれば素直になれないところとか変わらなくてびっくり(笑)
まあ、女装をやめた後に設定したせいもあるんでしょうけど(人間不信気味になったので)。
この頃から密かに琴子にデレてればいいよ!と思ったりしたのでした。
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いいわー 

ちび琴直!
今回のお話も頭の中でも原作のように 二人のやりとりがバッチリ 妄想できました。
可愛かったんだろうな 琴子の幼少期
さらに 少し意地悪な生意気な直樹
ちびっこだった二人が 大人になって こんな素敵な最初の出会いがあったらいいよねー(^▽^)
可愛い二人もツボでした!
良かったです

こんにちは! 

小さい頃に2人のこんな出会い、あっておかしくないですよね。琴子は曖昧にしか覚えてなくて、入江はしっかり覚えてる!これもまたありえるケースです。無邪気な琴子に、意地悪直樹・・・でも、薔薇で棘にさされながらも花冠作る直樹って、大人になっても同じだね。こそっとさりげなく、俺が作ってやった感を出さないところ、にくいです!
お話を読み終えて、なんだかとっても優しい気持ちになっちゃいました。素敵なお話ありがとうございました!

>TOM様 

ちょwどんだけwww最初の一文で吹いたよ(笑)

幼少時入江くん、小さいだけで今とあんまり変わらない気がしたんだ~。
まあ、大人になるにつれて、愛想はどんどんなくしていったようだけど(^^;
この頃ならまだ、ちょっとくらい素直さも残ってるかもしれん、と思ってね。
ママは絶対琴子の写真撮りまくったと思うよ♪密かに女装入江くん写真と並べてたら面白いな、とか考えたものww
幼少時もっと書きたいけど、あんまり思い出が多いと琴子が覚えてないのが変になっちゃうから、難しいよ~。
でもこんな小さい頃から萌えられるイリコトがやっぱり大好きだって思った(^m^)フフッ
また妄想するから、遊びにきてね!
(返コメ不要の部分のコーフン、すっごくよくわかる!嬉しいよね!!…とだけ書かせて♪)

>さくら様 

すっごく嬉しいお言葉をありがとうございます!原作のように妄想していただけるなんて、最高です♪
ちび琴子もちび直樹も、年相応の可愛らしさがあった頃があるはずで…私も楽しく書けたので、さくら様にも楽しんでいただけたならよかったです(^^)
また書きたいな~って思うんだけど、でもあんまり思い出がたくさんだと、琴子が覚えてないことと辻褄が合わなくなってきちゃうので、難しいなあって(^^;
でも、また何か書けたらいいなぁと思うので、その時はまた見てやってくださいませ!
コメントありがとうございました!

>たーくんママ様 

琴子の記憶はどんどん更新されてって、古い物は自動消去なイメージがあるのでこんなことに(笑)
入江くんは本当は優しいから、琴子が見てないところでならこれくらいしないかな~って思ったんですよね。
大人になってやってくれたらいいのに……まあ、絶対無理だと思いますが(^^;
いつもエロばかり考えてるわけじゃないんだよ☆というアピールになったでしょうか?
なってたらいいなぁ…(笑)なんて。
コメントありがとうございました!

拍手お返事 

>紀子ママ様

ぶっ…あははは!確かにそうですね!!確かにすでにベッドを共にしてますね(笑)!
入江くんが花冠をかぶって得意げ(?)にしてる写真が可愛くて…でもあれ、本人は燃やす気満々だったと思います。
人生の黒歴史ですもんね(^^;
ほんと、これが入江くんの初恋だったらいいなぁ…。琴子は幸せですよね♪
コメントありがとうございました!


>クチナシ様

こんばんは!
可愛いなんて、すっごい褒め言葉ですよ~!ありがとうございます♪
クチナシ様の応援、しっかり受け取りました!また妄想がんばります(^^)…って、妄想を頑張るってなんか変ですね(笑)
ぜひまた遊びにいらしてくださいね。心からお待ちしております♪
コメントありがとうございました!



>りりぃ様

ふふふ、ですよね。たまには純にならないと!(笑)
好きって言っていただけて、本当にうれしいです。書いてよかった~って幸せな気持ちになりました!
またこういった傾向のお話も書けたらと思いますので、見てやってくださいませ(^^)
コメントありがとうございました!



>みえ様

琴子のこういうお間抜けなところが可愛くて大好きなんです♪
きっと、入江くんもそうではないかと…いや、少しは気付いてほしかったりするのかな?

言われてみればそうですよね、琴美の誕生日は琴子と近いのかも…。
でも、そしたらママがすっごく張り切りそうですね。「琴美ちゃん&琴子ちゃんハッピーバースデー」とか垂れ幕を用意して、そりゃもう盛大なパーティーになりそうです(笑)
次回作も明日か明後日にはアップできると思うので、よかったらまた読んでやってください(^^)
コメントありがとうございました!

可愛い♪ 

あの写真につながるとは!!
そこがびっくりしました!!花冠の入江くん、印象に残ってます!!

そして小さい頃の入江くんをこうやって読ませていただけて感激です~。
入江くん、女装時代後はどんなひねくれたお子様になってしまったのだろうかと心配していましたが…子供らしくて安心しました♪
ちゃんと琴子ちゃんへの優しさもあったし!
お互いが初恋なんて素敵ですよね。

皆様が仰る通り、チビ琴子、チビ入江くん、可愛くてたまりません!
別荘のお庭も目に浮かぶようでした。紀子ママならそんなお庭を作りそうですね!!

あ~素敵なお話を今回もありがとうございます!

 

         こんばんは
     miyacoさん お話しありがとうございました。
 直樹がしっかり覚えてたんはぁ、やっぱりキャワイイ琴子だったからだったんでしょうねぇ。
大の字での寝姿ツーショット ママだけでなく私も欲しい一枚です。 琴子の初恋話の連続男子に、お顔も気持ちもビキビキと切れがかったと思うが、最後の登場人物にニンマリ顔だっただろうなぁ・・・速く自分と気づいて欲しいよねぇ。

>水玉様 

あの写真可愛いですよね(笑)
女装をやめた後の本人にはすっごく不本意なんでしょうけど、ちょっと得意気でニコッと笑うというよりも
ふふん♪みたいな感じで。
そう、最初はすっごくひねくれた可愛げゼロの子どもになってしまったのですが、あまりにひどい…(--;
ということで少しだけ子供らしさをプラス(笑)安心していただけてよかったです♪

ちび琴子とちび直樹、いいですよね。もっといっぱい遊んでいればいいのに…原作でもそんあエピがあったら
素敵ですたよね(^^)
これを書きながら水玉さんのあのサスペンスでドキドキしまくりで、気持ちがフラフラしておりました(笑)
実は、ちび直樹の一番最初のイメージはまーくんなんですよ!
…大変残念なことに、私ではあのように可愛らしい姿は書けませんでしたが(^^;
いや、ちびでも直樹っていう時点であの可愛さを期待するのは無謀なのかもしれませんけども。

コメントありがとうございました!

>吉キチ様 

こんにちは!
いやいや、私の方こそ、いつも見てくださって…しかもコメントまでくださって、ありがとうの気持ちでいっぱいです!

何せ一度見たら忘れないんですもんね、入江くんは(笑)それがあのお姫様琴子だったら、絶対覚えてるはず!!と…そもそもお姫様琴子が妄想のくせに、さらに妄想を重ねてみました。
確かに、琴子の初恋話はいつもの彼なら調教コース(何それ)ですよね…ププッ。
琴子、無意識でしょうけど、最後にあの話を持ってきたことでその夜救われているのだと思います(笑)
いつ気づくんでしょうね、琴子。
なんか「なぜいま?」というような時に気づいてそうな気がします~。
コメントありがとうございました(^^)
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