*初恋*

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 バカップルの忘年会 -ドキドキ病院編- Lip to love
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「二次創作」
短編

Before→After

 
 バカップルの忘年会 -ドキドキ病院編- Lip to love


Before→After





 直樹が大泉沙穂子との婚約を解消し、別の女性と結婚する――そのニュースは、あっという間にパンダイを駆け巡った。
 しかも相手は、以前会社内で一躍有名人となった相原琴子だという。
 あの冷徹でサイボーグのように人間味がない、若くして社長を凌ぐ手腕を見せる直樹が、どうして「あの」琴子なのか。
 それはパンダイの七不思議になるんじゃないか?と言われるほどの疑問となっていた。




「これでは話になりません。担当にもう一度再考させてください」

 提出されたいくつもの企画書を全て破棄するよう指示した直樹に、取り次いだ社員が震え上がる。
 大泉からの融資が受けられることは確定したとはいえ、まだまだ予断は許されない。限られた支援の中で、どれだけ実りを作れるのか。そればかりは、パンダイの力にかかっている。
 その重圧はかなりのもので、プライベートで言えば紀子による強行結婚のこともあり、直樹の疲労も苛立ちもピークに差し掛かっていた。
 年齢に見合わない冷静さと落ち着きで、これでも抑えている方である。
 
「あのぅ、そろそろ少しお休みになられては…」

 勇気ある秘書の一人が、秘書室からそう声をかける。
 しかし、ギロッと睨まれてすごすごと退散した。
 静かに閉めたドアの向こう、秘書室では、けんもほろろに扱われた秘書たちがため息を零している。
 社長である重樹が普段穏やかな人間であるため、この秘書室は大変居心地のよい職場だったのだけれど、見てくれはよくても仕事人間気味な直樹が来てからはその限りではない。
 別に、秘書室の人間もサボろとう思っているわけではないのだ。
 ただ、直樹が休まないのに自分達がのうのうと休むのも気が引ける。増して、直樹はいきなり秘書室を通ったりするものだから、その時に気まずい思いをしたくない。
 休憩時間は立派な仕事のうちではあるけれど、そこはそれ、人情というものかもしれない。
 

 秘書室の面々が今日もため息を吐いていると、歩くマイナスイオン…もとい、重樹が現れた。どうやら息子の様子を見に来たらしい。
 にこにこしながら秘書の一人一人に声をかけていく。
 重樹は秘書の中でも、特にキャリアと信頼の厚い男、藤野に声をかけた。

「直樹はどうしてる?」
「難しいお顔で、真剣に打ち込んでいらっしゃいます」

 物は言い様である。まさか息が詰まりそうですとは言えず、藤野は卒なくそう答えた。
 しかし、重樹にはわかっているのだろう。申し訳なさそうに苦笑している。

「そうだろうと思ったよ。安心しなさい、特効薬を持ってきたから」
「は…?」
「こっちにおいで」

 重樹が振り返ったので、秘書室が全員そちらを見る。
 そこには、可愛らしいワンピースに身を包んだ琴子がいた。
 何せ迷惑をかけまくった会社なので、心なし緊張しているようだ。あの沙穂子を振ってどうして、と言われているのも、もしかしたらわかっているのかもしれない。
 藤野は特に琴子に悪い印象もないので――歩く騒動だったという記憶はあるが――琴子を見ても、顔色は変えなかった。
 ただ、何が特効薬なのか?という気はする。
 いかに琴子が婚約者だとはいえ、あのサイボーグのような青年に効果があるとは思えない。油でもさしてやったほうがいいんじゃないか?と、密かに一番酷いことを思っていたりするのだ。
 しかし、重樹には効果があるという自信があるのだろう。
 
「そこのドアの影に隠れておいで」

 そう言うと、琴子を直樹のいる部屋に続くドアの陰に隠す。
 琴子も、重樹の意図がわからないようだ。戸惑ったように重樹を見ているが、それは秘書室の面々も同じことだった。
 重樹はにこにこしながら、直樹の部屋のドアを開ける。

「やあ、直樹。捗ってるかい?」
「…まあまあですよ」
 
 眉間にくっきりと皺を刻みながら、直樹は顔を上げる。疲労の色が濃く出ているその表情からは「まあまあ」の出来栄えの仕事など読み取れなかった。
 
「なら、少し休んだらどうだ。お前が休まなかったら、下の者も休みにくいだろう」
「できるものならそうします」
「一時間とは言わんが、せめて三十分くらい」

 なあ?と誘うと、直樹は額に手を当てて重樹を見た。
 机の上には未決済の書類が広がり、これのどこを見てそんなことを言うのか、と顔に書いてある。
 そもそもこんなことになったのは紀子の無茶のせいであり、止めなかった親父も同罪だと半ば八つ当たり気味に思ってしまうのも無理はない。
 重樹もそれはわかっているので、申し訳なさそうに笑った。

「お前が元気になるように、いいもの用意してきたから」
「琴子じゃあるまいし、ケーキなんかいりませんよ」
(すぐに琴子ちゃんが出てくるとは……やはり、直樹の頭の半分は琴子ちゃんで占められてるな)

 この流れですぐに琴子の話題が出てくるとは思っていなかった重樹は、少し驚く。同時に、妙に人間くさく、年相応に見えた息子が可愛く思えてきた。
 こんな風な直樹が見られるなんて、彼は思ってもいなかったのだ。
 本当に、琴子には感謝してもし足りない。

「いいから、ほれ、目を閉じてろ」
「はぁ?」
「いいから、いいから」

 あんまり重樹が勧めるものだから、直樹は仕方なく目を閉じた。
 重樹は開けたままだったドアを振り返り、影に隠れていた琴子を手招きする。事前の打ち合わせ通り、琴子は足音を立てずに近づいてきた。
 琴子が隣に立つと、重樹はうんうんと頷いて、琴子の肩をぽんと叩く。

キスのひとつでもしてやれ、とママが言っとったよ

 紀子の伝言をごくごく小さな声で伝え、それから、しーっと口に指を当てる素振りだけして、抜き足差し足でドアに向かう。
 真っ赤になった琴子が、そろそろと直樹に近づこうとしていた。

「親父、まだか?」

 疲れているせいか、いつもなら気づきそうな直樹が、まだ気づいていないようだ。
 重樹はくくっと笑いを漏らし、あと少しだと答えた。
 琴子が直樹の横に立つ。それを見計らって、重樹は言った。

「目を開けていいぞ、直樹」





 


 自分の父親ながら、一体何をしたいのか検討もつかなかった直樹は、諦めの気分で目を閉じていた。何を言っても無駄だ、というのはここ最近嫌でも体験しているのだ。少し目を瞑って気が済むのなら、そしてそれで邪魔されないのなら、少しくらい付き合ってやってもいいと思う。
 そうして付き合って、目を開けて飛び込んできた姿に、直樹はらしくなく息を呑んだ。

「琴子…!?」
「えへへ、久しぶり!入江くん!」

 ちゅ、と琴子が直樹の頬にキスをする。
 直樹は思わず琴子の腰を抱き、膝の上に抱え上げてしまった。
 疲れているせいと、長く琴子に触れていなかったことで、直樹の中の僅かばかりの理性が白旗を上げたらしい。
 どうせ誰もいないし、ということもあった。
 直樹は琴子を抱き締める。柔らかい体を抱きしめると、甘い匂いがした気がした。
 それを思い切り吸い込んで、ホッとする。

「お疲れだね」
「どっかの誰かさんのせいでな。前日までかなり仕事詰め込まないと」
「そっか」

 琴子が困ったように笑う。優しい琴子は、自分の結婚式なのに紀子のやりたいようにすることを受け入れている。それだけに、直樹のように切って捨てることもできない。根底には紀子への好意があるにしても、実の息子である直樹よりも紀子を考えてやっていると言ってもいいだろう。
 
「でも、そのおばさんが、今日あたしをここに出してくれたんだよ」
「へぇ?」
「あのね、今まで引き出物選んでたの。それで近くまで来たからって。おじさんに連絡取ってくれて」
「ふうん」
「あのね、あのね…」

 一生懸命言葉を重ねる琴子を、直樹はじっと見つめた。
 直樹がこの無茶苦茶なスケジュールを受け入れるのは、紀子のためではない。
 目の前の、琴子を手に入れるためだった。誰にも邪魔されないように、自分以外に触れる男が出ないようにする最短は、結婚だったのである。
 
(くそっ…人が我慢してる時に……)

 紀子からすれば好意なのだろうが、正直、今の直樹には決して手を出せない据え膳だ。
 じっと見つめる直樹に顔を赤くして、琴子は勇気を振り絞っていた。
 あの雨の日から、ようやく会えた僅かな期間の婚約者なのだ。嬉しくないはずがない。
 ずっと伝えたかった気持ちが今にも溢れてしまいそうで、琴子は言葉に詰まっていた。

「何だよ」
「あの……会いたかったの…」
「……」

 ぎゅう、と抱きつかれて、直樹がまた息を呑む。
 これ以上触れまい、と我慢を決め込んだのに、理性が崩れ去った今は呆気なくそんな決意は流されてしまった。
 琴子に応えるように抱きしめ返し、直樹は琴子の温もりを味わった。
 どちらからともなく唇を寄せ、キスをする。
 キスをして、離れて。他愛ない話を少ししては、またキスをする。その繰り返しだった。


 やがて、重樹の提案した三十分が過ぎる。
 直樹は名残惜しい気分で琴子の唇から離れた。二人の唇の間を、細い銀の糸が繋ぐ。
 どれだけ思いを交感しあったかの証拠だった。

「お仕事…頑張ってね」
「ああ」
「時々帰ってきたら、あたしが寝てても起こしてね。絶対起きるから、声、聞かせて…んっ」
「わかったよ」

 ちゅ、とキスをすると、琴子がくすぐったそうに笑った。
 いい加減仕事に戻らないと、支障が出る。直樹はそう自分を戒め、琴子を膝から下ろした。
 琴子の手を引き、重樹のいる社長室へ向かう。どうせそこには、紀子もいるに違いない。
 それは頭痛の種だったけれど、こうして琴子と過ごせたから、今日は許そうと思った。
 直樹の顔から、眉間の皺が消えていた。




             **********





「ねえ、見た?」
「見た!」
「ほんと、特効薬だったのね……」
「っていうか、社長代理も人間だったんじゃない!」

 くすくすと秘書室に笑いが満ちる。
 あまりにも優秀なものだから、ついつい同等か年上の感覚で接してしまうけれど、実際はまだ大学生なのだと思い出す。それほどに直樹の今回の様子は年相応で、ぴりぴりしていた秘書室を和ませる効果を持っていた。

「相原さんの口紅、全部移ってたものね」
「本人、きっと拭ったつもりよ。バレバレなのにね」

 藤野はそんな女性秘書の話を聞きながら、彼もまた表情を緩めていた。
 子どもに夢を与える会社なのに、トップが機械ではお話にならない。社長代理もちゃんと「人」だったとわかったことは、妙に嬉しかった。
 きっと今、我武者羅なのも、彼女のためだろうと推測できる。
 
「さあ、仕事に戻るぞ!」

 仕事量は変わらないし、何一つ楽になってなどいないけれど。
 つい三十分前とは全く違う空気が秘書室を包んでいたのだった。




END



短い婚約期間でも、妄想はいくらでも出来るから不思議です。この頃のイリコトも好き♪
結婚後(特に啓太騒動後)なら、見せ付けるために口紅をわざと少し残したりもしそうですが、この頃はまだ青い入江の名残があると思うので、素でバレバレになっていそうな気がします。
あ、なんか青い入江が書きたくなってきたー…。
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~ Comment ~

ピッタリです。 

こんにちは
 サイボーグ直樹・・・ ピッタリ・・・ サイボーグ直樹の特効薬琴子・・・
眉間の皺も一発取りには、ウゥンウゥンと思ってます。 存在が特効薬でkissはスペシャルバージョンかなぁ? 琴子も直樹もお互いに逢えなく不足してたから
 ママからの二人への特効薬プレゼントみたいです。 直樹の残紅・・・
嬉しくて・・・わざと付けてたりしてぇ~。琴子を唇に感じたくて・・・それはぁ無いかぁ~。 

 

いいね、いいね~!
読んでてキュンキュンきちゃいます!
『キスをして、離れて。他愛ない話を少ししては、またキスをする。その繰り返しだった。』ってところが、今回私の一番のツボ!
いかにも恋人な感じのこの描写がたまりません。
絶倫で俺様な入江も好きだけど、miyacoさんも書きたいと言っておられる「まだまだ青い入江」もなかなかの魅力!
入江~、大好きだ~!!琴子になりた~い!

さすが[i:63893] 

琴子の存在自体が 直樹の特効薬! 一緒にいなかったらますますイライラして サイボーグになっちゃいますね(^^;)ゞ

二人でイチャイチャしてもらえば 回りも安泰ですね
さすが紀子ママ!息子をよく知ってる(^_^)
甘えん坊琴子の特効薬に直樹もでれでれだよね

>吉キチ様 

パンダイでの仕事に関しては、そんな感じですよね!ぴったりと言っていただけてホッとしました(^^)
特効薬っていうか油っていうか。RPGゲームでいうなら、万能薬でしょうか(笑)
直樹のどんな不調も治してしまうっていうことで♪
嬉しくてわざと付けてる・・・そんな余裕すらないくらい、飢えた入江くんだったらいいな~と妄想してますww
コメントありがとうございました!

>たーくんママ様 

キュンキュンしていただけました!?よかった~!
この二人、恋人期間が短すぎですもんね(笑)こりゃあもう、いっぱい妄想してラブラブしてもらわねば!と思い立って(これまた急に)出来たのがこちらなので、キュンキュンしていただけたなら本望です(笑)
青い入江→まだまだ青い入江→絶倫入江→猛獣入江 というコースなんでしょうかね(^m^)
どの入江くんも魅力たっぷりなので、私も大好きです♪
コメントありがとうございました!

>さくら様 

琴子に途中で会えなかったら、サイボーグ入江の完成です☆
きっと紀子ママは、重樹パパからその話を聞いていて画策したのではないかと…(笑)
30分のイチャイチャで、最長2日は持つ…のかな?適当ですがwwwあれ、これじゃ燃費悪すぎですかね?

甘えん坊琴子は、密かに入江くんのツボだと思っております♪
コメントありがとうございました!

 

30分だけの甘~い逢瀬が目に浮かびましたぁ(照)
しかし、いつもの入江くんに対してなら秘書さんたちも目の保養の毎日にウキウキだったろうに、
あの2週間の彼と接するのは相当キツかったのがこりゃまた目に浮かびました(泣)
琴子に嫉妬じゃなくて感心してるくらいですもんね。どんだけ眉間のシワ深かったんだよ、入江。

拍手お返事 

>TOM様

考えてみたら、婚約中のスキマってほとんど書いてなかったんですよね。kiss×kissくらいしかなくって。
妄想はしてるのに形にしてないじゃん!って気づいたので、こうなりました♪
私も多田先生の絵で見たかったな、琴子を膝にのせる入江くん!表紙絵でもないですもんねぇ。
きっといっぱいキスをして、いっぱい抱きしめて、入江くんはパワー充電していたと思います!は~、イタキス妄想が楽しすぎて、ほんとどうしようって感じです(笑)
青い入江、猛獣直樹と違っててピュアで可愛く思えてきました(^^;だって猛獣直樹はすぐに琴子押し倒しちゃうんですもん!しかも直樹視点だとエロいしwwwww
次は青い入江になるかも~、です。
コメントありがとうございました!



>紀子ママ様

口紅がうつるくらいキスして、それで満足できるんだから…この入江くんも、まだまだ可愛いですよね(笑)
少なくともうちのブログでは、結婚後は野獣と化してますから(^^;
きっと、琴子が可愛くて仕方ないんだと妄想しています♪
コメントありがとうございました!


>naotti3様

原作でも触れられてますもんね!入江くんが人間らしい感情をもてるのは、琴子が傍にいる時だけって。
鴨狩の一件では、入江くん酷いっっ!って思って読んでいましたが、あの台詞で吹っ飛びました♪
帰ってから…ですか。んふふふwwwww
スレスレになりそうなんですよね…調教師入江の再登場というか(笑)妄想しちゃっていいですか!?

コメントありがとうございました!(あと、ネタも♪)

>たらこ様 

短い婚約期間は、会えた時は甘々だったに違いない!と妄想してるんです♪
どーせ結婚後の方が喧嘩しますしね(笑)
きっと直樹の眉間のしわは、ボールペンが挟めるくらいだったんだと思いますwwww
イリちゃん社長がほんわか癒し系で、社長代理はツンドラですから……秘書課のみなさまの苦労も押して知るべし、なんて(笑)
コメントありがとうございました♪

拍手お返事 

>クチナシ様

はじめまして!このような辺境の地まで、ようこそお越し下さいました(^^)
「雪」のつく…ああああ、あの素敵なサイト様から!!うちはもう、リンクしていただくのが申し訳ないほどショボショボなのですが、でも、楽しめたというお声をいただけて一安心いたしました!温かいお言葉、ありがとうございます~!
バカップルだのアニマルだの、なんだか本当にイタキス?というようなカテゴリばかり並んでおりますが、イタキスへの愛だけはしっかりありますので、また見に来ていただいて、楽しんでいただけたら幸いです♪
お待ちしております!
コメントありがとうございました(^^)
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